高熊四国霊験記
奇妙頂礼遍照尊 現世我らを憐れみて 二世の誓願垂れ給う
殊に四国の霊場は 入唐求法の御時に 天竺釈迦の高僧より
釈尊遺跡は御八塔の 霊砂授かり御帰朝し 諸人結縁させんとて
納め御加持なし給う されば巡拝する人は 未来待たずに現世から
密厳華蔵の極楽に 参りましてぞ仏智をば ひらきなされし霊験の
実に霊験あらたにて 昭和二年の六月に 伝照愛石霊夢にて
榎本なる霊水を 薬しせよとのお告げあり 弘法大師の身心を
昭和二年の三月に 高野奥なる岩陰に 金剛定にぞ入り給う
金堅すでに絶ゆれども 遺音いよいよ新しく 今も昔も変わりなし
高熊山は極楽堂 東海より西の果て 津々や浦々至るまで
四季の眺めも色さめて 春は花咲きまた夏は 緑若草萌え出でて
秋は八千草咲き乱れ 冬は雪見の都山 なおも御山の頂に
四国修行の御時の 大師御姿そのままを 仰ぐもいとどありがたや
雨の降る日も風の夜も 雪の朝も厭わずに 麻の衣に網代笠
金剛錫杖を右につき 左御手に数珠を持ち 我らにしめす偉業には
一重光明真言を 行住坐臥に唱うれば 宿障いつしか消え果てて
往生浄土に定まれる 疑念放れて真心に 大師御袖にすがりなば
いかに宿世の業病も 危難諸共身にかえて 救い給わる御仏や
雨露の恵みぞありがたや