中将姫雪責口説

尻切れで終わってしまっている。本当は、もっと長く続くのだろう。

 

 

中将姫雪責

 

今に名高き中将姫は 世にも稀なる孝行者よ 仏信心怠りなくて

意地の悪いは岩根の御前 継子いじめの悪体面よ それや姫君継母なれど

仰せ背きは露いささかも 辛いことでもただはいはいと 厭な顔さえ一度もなさぬ

されど前世の因縁なるか 岩根御前は中将姫が 顔を見るさえ憎いと云うて

世にも恐ろし雪責なさる それというのもあの姫君が 日頃信ずる観音像を

わざと岩根が盗んでおいて それを出せよと日毎の折檻 そのや姫君少しも知らぬ

無実の罪を受けたるなれど 証拠なければ言い訳さえも 白状するさえ出来ざることよ

岩根御前は僕の者に 仰せ出だされ彼の姫君を 一間の内より引きずり出して

雪の降る日も容赦はなくて 上着引き剥ぎ割竹持ちて 白状いたせと打擲させる

姫は悲しさ詮方ないよ 一つ二つのその打擲が 五臓六腑にこたゆるばかり

そのや桐の谷この有様を 垣の外にて見ているけれど 悲しいことには鍵金かたく

破り入るのがさもないならば 垣を乗り越し入るの外に 仕方なけれどもし僕等に

狼藉者と言われたときは 一言なりとも言い訳立たぬ 姫の折檻さるるを見ては

歯噛みなせども境の垣に 涙流して見ているばかり 姫は切戸のその外面には

俺が遣いし桐の谷ともに 泣いているのは知ってはいます それに無実のあの観音の

御像の行方はわしゃ知りゃしない 盗んだ人こそあの継母の 岩根御前と他人から聞けど

それをこの場で言い立てすれば 母に罪をば着せるも道理 そのや証拠もないことなれば

これも前世の罪滅ぼしと じっと無念を堪えてござる 外に立ち聞くあの桐の谷は

忠義者にてただ一身に 姫の御身を気遣うばかり もうし姫君観音像の

行方穿議でござるであれば 何のお隠しなされよことぞ あからさまにと言い訳なされ

垣の外にて気を励ませば 打たれながらも中将姫は そのや桐の谷未練なことを

云うてくれるな云わずにおくれ どんな責め苦にわしゃ遭うとても そこでそなたが云わぬがましよ

早くその場を立ち退きなされ