吉田屋口説

所謂「二つ升」の話で、類似する昔話が方々に残っている。

 

 

吉田屋

 

人は一代名は末代よ 因果応報は仏の教え 昔いにしえ神代も時も

今の世までも正直者が 孫子栄えてご繁昌なさる たとえ万両のお金があろと

他人に善根しきらぬ者は 人の顔したこの世の鬼よ 肥後の熊本吉田屋さんは

親の代から二桝使う 他人にやる時ゃ八合桝で わが身とる時ゃ一升と二合

相じ四合の我欲をなさる ちぎやはかりの目までも盗む それが我が子のお初に報い

 ※ちぎ=ちきり(ちぎ秤)

額両方に角生えまして 体一面鱗の肌よ いつか噂が世間に立ちて

鉄の牢屋を建てねばならぬ 四本柱は皆鉄よ 梁や垂木は皆銅よ

中に一本桧の柱 牢の中にはお初を入れて 鉄の鎖でしっかり繋ぐ

されどお初の蛇身の魔力 鉄の牢屋を一夜で破り 肥後と筑後の界の山に

大目池とて大池ござる 池のほとりにお初は立ちて 未だにこの池主ないからは

わしがこれから主にぞなろと 言うてお初はざんぶり沈む 親の犯した重なる罪が

ついにその子に報いしものと 因果応報は仏の教え 末の世までもよき見せしめと

今の世までも口説に残る