いろは口説

四十八文字いろはの口説 国を申せば日向の国で 寺の名前は円通寺と言うて
和尚の名前がコケツの和尚 和尚は一代 名は末代と 死んだ後までその名は残る
コケツ和尚の作らせ給う 四十八文字いろはの口説 聞いてたしなめ世の人々よ
イ いとけないもの愛して通せ
ロ 老は敬い無礼をするな
ハ 腹がたつとて皆まで言うな
ニ 憎み謗るも皆わが身から
ホ 誉めて貰うて高慢するな
ヘ 隔てある中 遠慮になされ
ト 隣近所と物言いするな
チ 近い間はなお垣をして
リ 理屈あるとも皆まで言うな
ヌ 盗み隠しは大禁物よ
ル 流浪するもの愛して通せ
ヲ 親に孝行火の元大事
ワ 若いときには皆それぞれに
カ 家業励むが第一番よ
ヨ よきも悪しくも人事言うな
タ たとえ身分が賎しいとても
レ 礼儀作法は怠るなかれ
ソ 粗略者だと言われぬように
ツ 常の身持ちが第一番だ
ネ 寝ても覚めても身は正直に
ナ 何が無いとて世を恨むなよ
ラ 楽な身過ぎはただ一人も
ム 昔故人の教えを守れ
ウ 浮世 世渡りゃ一夜の宿よ
ヰ 今の難儀を忘れぬように
ノ 後の世がまた大事でござる
オ 終わり果てねばわが身は知れぬ
ク 国の掟に背かぬように
ヤ 役儀勤めは辛抱に努め
マ 眼かすめてとん欲するな
ケ 剣の地獄はこの世にござる
フ 不孝者だと言われぬように
コ 心のままにはならないものよ
エ 栄誉栄華はわが身の破滅
テ 手前よいとてけんとにするな
ア 悪しき事なら真似にもするな
サ 三度食事に感謝を捧げ
キ 聞いてたしなめ浮世のことを
ユ 夕べ聞きにし後世のことを
メ 滅多矢鱈にとん欲するな
ミ 身の上大事と心にかけて
シ 死んだ後まで悪名が残る
ヱ 絵知らざるとも諸芸のことを
ヒ 暇な時には習うておけよ
モ もったいないぞや尊き教え
セ 世界国々回りてみても
ス すんど大事は後世の道よ
京 京も田舎もみな同じ事
一 一に信心仏の位
ニ 西の浄土に安楽できる
三 三途川よとおもむく時は
四 死出の山路を衣にかけて
五 ご縁如来の法談とかれ
六 六字名号いただくものは
七 七宝荘厳極楽世界
八 山ほどご恩のある親さまへ
九 国を離れてその行く先は
十 尊き教えを身胸にいだき
百 百度参りを幾たびしても
千 千部お経を読んだとしても
万 万に一つの悪事をするな
億 奥の深いが南無阿弥陀仏
兆 兆で収めるいろはの口説