佐伯市の盆踊り唄 4

●●● 大文字かぼちゃ(その1) ●●●

 「大文字かぼちゃ」の唄は、これは数ある堅田踊りの音頭の中でも、特に遊郭の騒ぎ唄の雰囲気が色濃く感じられる曲調である。特に、堅田南部より採集されている「その1」のグループはその傾向が顕著。陰旋で、三味線の合の手も賑やかに、聴いていると大文字屋の賑わいが目に浮かぶ。

 この唄は「大文字かぼちゃ」とか「大文字屋」「かぼちゃ節」などと呼ばれた古い流行小唄で、宝暦初めより江戸および大阪で大流行したという。大文字屋とは、江戸は新吉原京町の大見世。楼主の市兵衛は最初河岸見世からのスタートだったが、遊女の惣菜を安価のかぼちゃばかりにするなどして金をため、京町に「大文字屋」を持つまでになった。それで「かぼちゃ市兵衛」という渾名で呼ばれ、おそらく最初は「ケチなやつ」との含みがあったかと思われるが、本人は、背が低くて丸顔の猿眼、愛嬌のある自分にぴったりの渾名だと気に入って「大文字屋かぼちゃ」と自称した由。そのうち「大文字かぼちゃ」の小唄まで作られ大流行、近隣在郷の子供までもが「ここに京町、大文字屋のかぼちゃとて…」云々と唄い囃し、本人も一緒になって「ここに京町…」云々と唄うような始末であったとか。

 とまれ、江戸や大阪で大流行したというこの唄も残念ながら端唄・俗曲として生き残ることはできず、今ではすっかり忘れ去られている。その忘れ残りが堅田踊りの演目として残っているわけだが、民謡緊急調査ではなんと「亥の子唄」としても同種の節が採集されている。おそらく座興唄としても唄われたことだろう。なお、どの集落でも「市兵衛」ではなく「一郎兵衛」となっているが、これは堅田に入って来たときには既にこうなっていたと思われる。

 

盆踊り唄「大文字屋」 佐伯市府坂・竹角・石打・波越(下堅田) <小唄、二上り>

☆ここは京の町 大文字屋のかぼちゃとて その名は一郎兵衛と申します

 背は(合) 低うても ほんに見る目は猿眼 アラヨイワイナ サーヨイワイナ ソレ

☆ここに春駒 すすふる音に春めけば 狐はスココン今宵とな

 一夜は ほんに ほんにスココンと鳴き明かす

☆頃は三月 雛祭りじゃと村々に 娘は打ち寄り遊びます

 中に 色めく 中に色めく姉娘

☆四月八日は お釈迦の誕生と申します お茶の出花を頭から

 かくりゃ お釈迦は ほんにお釈迦は濡れ仏

○うちの五郎兵衛と 隣の五郎兵衛と よその五郎兵衛とな

 三つ 合わすりゃ ほんに三五の十五郎兵衛

○うちの茶釜と隣の茶釜と よその茶釜と

 三つ 合わすりゃ 三唐が唐金 唐茶釜

メモ:はずまないリズムであっさりと唄うが、その旋律は起伏に富んでいる。三味線はほとんど唄の節をなぞる程度だが、「背は」の後に入る合の手もよいし、各節末尾に入る長い三味線もなかなかよい。全体的に俗っぽい文句ではあるも、曲調からそれなりに洗練された印象を受ける。なお、三つ合わせの文句(○印)では、首句でいうところの「その名は一郎兵衛と申します」の節を飛ばして唄う。堅田南部では府坂で盛んに踊られている。手踊りで、わりと簡単そうに見えるが足と手の出し方が途中で逆になるのが紛らわしく、間違いやすい。しかし、子供も上手に踊っている。

(踊り方)

府坂 右回りの輪

1) 両手を右後ろに低く流しつつ、右足を後ろに引き加重し左足を軽く浮かす。

2~5) 左手下ろして右手アケで上げ、反対、左手下ろして両手フセで上げ、両手を体側に下ろす。このとき左足から前に進んで3歩目で輪の内向きになり、右足を前から引き戻して束足(右足に加重)。

6・7) 左下にて手拍子(右手を打ち下ろす)、もう一度手拍子で右手を右上に打ち上げて手首をクルリと返す(同時に左手で右袖をとる)。このとき、左下の手拍子にて左足を前に踏み、次の手拍子からは右足・左足、右足と継ぎ足で進む(早間にチョチョチョンと)。

8・9) 6・7の繰り返しにて、左回りに回り込んでいき反対向きになる。

10・11) 右手で左の袖をとり、左手を左上に上げて手首をクルリと返す。このとき、左足、右足・左足と早間にて左に回って元の向きになる(チョン、チョチョの拍子で)。

12・13) 左手で右の袖をとり、右手を右上に上げて手首をクルリと返す。このとき、右足、左足と出てすぐ右足に踏み戻す(チョン、チョチョの拍子)

14・15) 反対動作

このまま冒頭に返る。

 

 

 

●●● 大文字かぼちゃ(その2) ●●●

 こちらは陽旋で唄う。そのため、節の骨格は「その1」とそっくりそのまま同じなのに、田舎風の雰囲気が感じられる。軽やかなテンポで、うきうきとした雰囲気の楽しい唄である。とても人気が高く、堅田北部の各集落のほか上堅田でも盛んに踊られている。当該地域の「与勘兵衛」と同じく、各節末尾に唄囃子がつく。これも「その1」にて三味線で弾いているところに文句を乗せただけである。

 

盆踊り唄「一郎兵衛」 佐伯市宇山・汐月・泥谷(下堅田)、長谷(上堅田) <小唄、三下り>

○うちのナー 一郎兵衛と隣の一郎兵衛と よその一郎兵衛とナー

 アラ三つ(コノセ) 合わすりゃ ほんに一・三が三郎兵衛とな

 アラヨイワイナ ヨイワイナ

 「一反畑のぼうぶらが なる道ゃ知らずに這い歩く

○うちの二郎兵衛と隣の二郎兵衛と よその二郎兵衛と

 三つ合わすりゃ ほんに二・三が六郎兵衛とな

 「やっとこやしまのほしかの晩 ほしかの晩なら宵から来い

☆ここはナー 京町大文字屋のカボチャとて その名は一郎兵衛と申します

 背は(コノセ) 低うても ほんに眼は猿眼

 アラヨイワイナ ヨイワイナ

 「一反畑のぼうぶらが なる道ゃ知らずに這い歩く

☆頃は 七月精霊の祭りだと精霊棚 くりたてくりたて飾り立て

 中で 坊主が ほんに衣に玉だすき

 「ごろごろ鳴るのはなんじゃいな 石臼雷猫の喉

☆四月 八日のお釈迦の祭りだと申します 新茶の出花を頭から

 かくりゃ その日の ほんにその日の祈祷になる

 「カラカラいうのは何じゃいな 墓参に嫁ごの日和下駄

メモ:元唄の首句「ここは京町…」云々からの派生である「うちの一郎兵衛と隣の一郎兵衛と…」云々を首句にしている。このような三つ合わせの文句は、昔から「はやことくずし」などと言って「よしこの節」や「ラッパ節」の変調として行われたものである。たとえば「ラッパ節」の「うちの茶釜は唐金唐茶釜、隣の茶釜も唐金唐茶釜、よその茶釜も唐金唐茶釜、三つ合わせて三唐が三唐金の三唐茶釜」などの文句は比較的よく知られている。「うちの一郎兵衛と…」云々もそれと同じ発想だが、「一三が三郎兵衛」とか「二三が六郎兵衛」などと九九の声も入れ込んであるのがおもしろい。三つ合わせの文句(○)の場合は、「ここは京町」の文句でいうところの「その名は一郎兵衛と申します」にあたる節をとばして唄う。踊りは男女別で、1中の輪が男踊り、外の輪が女踊り。6足の佐伯踊り(長音頭と同じ)なのだが、男踊りがたいへん派手で人目を引く。

(踊り方)

略 …長音頭の踊り方「A」を参照してください。

 

 

 

●●● 大文字かぼちゃ(その3) ●●●

 これは西野にのみ伝わっている節で、「その1」「その2」とは違い弾んだリズム(ピョンコ節)で唄う。陰旋だが「その1」とは節の骨格が異なり、より派手な感じの節である。三味線の弾き方も派手で、特に各節末尾の「アーヨイワイナ、サーヨイワイナ」の後に入る長い三味線は、早間に畳みかけるような感じでなかなか調子がよい。

 

盆踊り唄「だいもん」 佐伯市西野(下堅田) <小唄、三下り、男踊り>

☆ここに京の町 大文字屋のかぼちゃとて アラその名は一郎兵衛と申します

 背は(ヤットセイ) 低うても ほんに猿眼 アーヨイワイナ サーヨイワイナ(ソレ)

☆頃は正月 若松様じゃと申します そりゃまたどうして申します

 枝も 栄ゆる ほんに葉もしげる

☆二月初午 すすふる音に春めけば 狐がスココン今宵から

 今夜 一夜が ほんに夜のこく

☆花の三月 雛祭りじゃと申します 姫女が喜ぶ節句ぞな

 今夜 一夜が ほんに夜のこく

☆四月八日は お釈迦の誕生と申します お釈迦の産湯を頭から

 かくりゃ お釈迦も ほんに濡れ仏

☆五月五日は ちまきに兜 飾り立て 子供の喜ぶ節句ぞな

 中で 杓ふる ほんに飴もふる

☆頃は六月 夏祭りじゃと宮々で 氏子がにわかに跳び遊ぶ

 中で 田主さんが ほんに稲を植うる

☆頃は七月 精霊の祭りと棚かけて 坊様たちゃ衣に玉襷

 中で 踊り子 ほんに音頭とる

☆頃は八月 八幡祭りと祝い込み その名はそうだと申します

 背は 高うて ほんに伊達男

☆頃は十月 亥子の餅は石で搗く 搗けども練れんと申します

 練れんはずだよ ほんに石じゃもの

メモ:2節目以降は12月数え唄になっていて、その文句を見ると田植、亥の子餅ほか田舎風の内容が多く含まれている。おそらく元唄にはない文句だろう。全部唄うと冗長になるので途中でやめてしまうことが多く、まだ九月・十一月・十二月を採集できていないばかりか、六月や八月なども聞き書きのため合っているか疑わしいが、一応参考のために聞き覚えた文句を全部載せてみた。西野に残る10種類以上の演目の中では比較的易しい踊りで覚えやすいこともあってか人気が高く、この踊りになるといつも二重三重の輪が立っている。

(踊り方)

西野 右回りの輪

・輪の中を向いた状態から

1) 両手をアケにて振り上げて軽く握り、左足を前に出す(加重せず)。

2) 両手をフセにて左に下ろし、左足を左に踏む。

3・4) 左手で右の袖をとり、右手を右上に振り上げつつ右足を右に踏み、右手首を返して払いつつ左足を左にトン(加重せず)。

5~7) 腰をかがめて手拍子2回にて、左足から早間に3歩で左回りに1回転しながら左に移動する(転ばないように気を付ける)。そのまま左手で右の袖をとり、右手を右上に振り上げつつ右足を踏む。結局、足運びのリズムはチョチョチョン、チョンとなる。

8・9) 3・4の反対動作

10~12) 左手で右の袖をとり、右手を右上に振り上げつつ右足を右に踏み、右手首を返して払いつつ左足を右足に寄せて踏み、両手を右に流して右足を右に踏む(ここで左に向きを変え、右回りの輪の向きになる)。

13~15) 左手下ろして右手アケで上げ、反対、左手下ろして両手フセで上げ、両手を体側に下ろす。このとき左足から3歩輪の向きに進み、4歩目にて輪の内向きにトンで束足(右足に加重)

このまま冒頭に返る。

 

 

 

●●● 高い山(その1) ●●●

 これは全国的に唄われた流行小唄で、ごく単純な節の戯れ唄である。昔は、三味線や端唄の稽古をする際に、ごく初級のものとして「岡崎女郎衆はよい女郎衆」の唄などと並んで広く親しまれていた。今は端唄・俗曲として唄われることは稀になっているも、その土地々々で郷土化し全国各地で俚謡として採集されている。大分県もその例に漏れず座興唄としてはかなり広範囲に亙って行われたが、盆踊りの音頭に転用しているのは堅田踊りのみ。「与勘兵衛」と同様に、堅田踊りの伝わる集落のほとんどに伝承されている。踊り方には集落ごとの差異が大きいが、一連の堅田踊りの中ではごく易しい方である。

 集落によって少しずつ節が違うが、元唄から大きく離れてはいない。ひとまとめにしても差し支えないような気がしたが、一応、大きく2つのグループにわけてみた。まず「その1」のグループはテンポがのろまで、弾まないリズムで唄う。これが最も元唄に近い。

 

盆踊り唄「高い山」 佐伯市長谷(上堅田)、宇山・汐月・江頭・津志河内・小島(下堅田) <77・75一口、二上り>

☆高い山から谷底見ればヨ(ソコソコ)

 瓜や茄子の花盛りヨ アラソーレモ(合) アラも一つ

☆高い山からお寺を見れば お寺寂しや小僧一人

☆あの子よい子だ 牡丹餅顔で 黄粉つけたらなおよかろ

☆あの子見るとて垣で目をついた あの子 目にゃ毒 気にゃ薬

☆好いてはまれば泥田の水も 飲めば甘露の味がする

メモ:元唄の末尾につく「あっちもヨヤどんどんどん、こっちもヨヤどんどんどん」とか「アリャどんどんどん、コリャどんどんどん」などの囃子を省き、そこを三味線に担わせている。それでもずいぶん田舎風の印象を受ける唄である。手踊りで、所作がおとなしい。

(踊り方)

A 堅田北部・長谷 右回りの輪

「高い山から」 音頭の唄い出しから1呼間遅れて踊り始める。両手は体側に下ろしたまま動かさず、左足の前に右足を踏み、左足に踏み戻し、右足を踏みかえる(チョンチョンチョンと踏む)。これの反対、反対で小さく千鳥に進む。

「谷底」 左手アケにて前に上げ、チョンチョンチョンと3回上に招く。その際、左足を前にトン、トンと空踏みし3回目で加重。

「見ればヨ」 右手を左下に下ろし両手を小さくかい繰りしながら右足を左足の前に踏みすぐ左足に踏み戻し、両手をアケで上げながら手首を返し上がりきったところにてフセで軽く握って小さく横に開きながら、右足を後ろに引き加重する。

「ソコソコ」 両手を下ろしながら左足に加重する。

「瓜や茄子」 右手を右下から左上にアケで振り上げて手首を返し、フセで右下に下ろす。その際、左足の前に右足を踏み、左足に踏み戻し、右足を踏みかえる。

「の花」 左手アケにて前に上げ、チョンチョンと2回上に招く。その際、左足を前にトンと空踏みし2回目で加重。

「盛りヨ」 右手を左下に下ろし両手を小さくかい繰りしながら右足を左足の前に踏みすぐ左足に踏み戻し、両手をアケで上げながら手首を返し上がりきったところにてフセで軽く握って小さく横に開きながら、右足を後ろに引き加重する。

「アラソーレモ」~三味線~「アラも一つ」 左から交互に3流し、右に巻いて流す。このとき、左足から裏拍で4歩、左足・右足と早間、都合5呼間にて右回りに1周する。

(三味線)

・左から交互に2回流し、左に巻いて流す。このとき、左足から裏拍で2歩前に進み、左足を裏拍で左、右足・左足と早間で左前に進む。

・反対動作にて右、左と流して前へ、右に巻いて流して右前へ。

・左手は下ろして、右手をアケで振り上げて手首を返しフセで軽く握りつつ左足を前から引き戻して加重。

・反対動作にて右足を前から引き戻し、すぐに左手を下ろしながら左足を右足に引き寄せて束足になる。

このまま冒頭に返る。

 

盆踊り唄「あの子よい子」 佐伯市黒沢(青山) <77・75一口>

☆あの子よい子じゃ 牡丹餅顔じゃナ(ソレ)

 黄粉つけたらなおよかろナ(イヤ ソーレバ)

☆今朝の寒さが笹山越えて 露が袴の裾濡らす

メモ:堅田北部の節とほとんど同じだが、こちらの方が若干軽やかである。三味線は入らず、「イヤソーレバ」のあとは「アリャドンドンドン」の囃子を太鼓に任せて「ドンドンドン」と三つ打ったらすぐ次の文句に入る。そのため、三味線を伴う集落よりも一節が短い。

 

 

 

●●● 高い山(その2) ●●●

 こちらは「その1」よりもテンポが速く、節回しがあっさりとしている。特に上句の唄い出しのところがずいぶん簡略化されているので「その1」よりもずっと易しく、簡単に唄える。

 

盆踊り唄「牡丹餅顔(高い山)」 佐伯市西野(下堅田) <77・75切口説、三下り、男踊り>

☆ソレー 高い山から谷底見ればヨ(ソコソコ)

 瓜や茄子の花盛りヨ アラソーレワ(合) アラま一つ

☆高い山からお寺を見れば お寺寂しや小僧一人

☆恋で身を病みゃ親達ゃ知らず 薬飲めとは親心

☆ござれ話しましょ小松のかげで 松の葉のよに細やかに

☆あの子ぁよい子じゃ 牡丹餅顔で 黄粉つけたらなおよかろ

☆鮎は瀬に棲む 鳥ゃ木にとまる 人は情けの下に住む

☆あの子見るとて垣で目をついた あの子 目にゃ毒 気にゃ薬

☆好いてはまれば泥田の水も 飲めば甘露の味がする

メモ:「アラま一つ」の箇所が、「その1」では節をつけるのに対して西野では地口になっており賑やかな印象を受ける。西野に伝わる男踊りの中では最も易しく、覚えやすい。子供も上手に踊っているのを見かける。

(踊り方)

西野 右回りの輪

「ソレー 高い山から」 両手を後ろに組みながら左足を輪の向きに前に踏み、手はそのままに、右足、左足と早間で左前に進む。以下、手は組んだまま反対の足運びにて、右足、左足・右足と右前に進む。反対、反対で左前へ、右前へ。都合4回の継ぎ足にて千鳥に前に進んでいき、最後で両手をほどいて体側へ、

「谷底見ればヨ」 左手下ろして右手アケで上げ、右手下ろして両手フセで上げ…と両手交互に4回上下で、5回目は両手フセで上げ、両手を体側に下ろしてすぐ右に小さく跳ね上げる。このとき、左足から5歩でその場で右回りに1周してさらに右に回り輪の内向きになり、右足を踏むと同時に左足を浮かす。 ※この所作のときは片足を踏んだら反対の足を浮かすと同時に、その側の手を振り上げるようにして歩く。以下同様。

「ソコソコ、瓜や茄子の」 左手で右の袖をとりつつ右手を握りアケに返して肘から先を前に出し、反対、反対、反対。この手に合わせて輪の向きに前に進んでいく。左足を前へ、右足・左足と小さく前へ。これを反対、反対、反対で、継ぎ足の連続で進む。

「花盛りヨ」 左手下ろして右手アケで上げ、反対、左手下ろして両手フセで上げ、両手を体側に下ろしてすぐ右に小さく跳ね上げる。このとき左足から3歩前に進み、輪の内向きに右足を踏むと同時に左足を浮かす。

「アラソーレワ」~(三味線) 左手下ろして右手アケで上げ、反対、左手下ろして両手フセで上げ、両手を体側に下ろす。このとき左足から3歩輪の向きに前に進み、4歩目にて輪の内向きで束足(右足に加重)。

「アラま一つ」 左手をアケで前に振り上げ、手首を返して払うと同時に左足を前に小さくトン(右足加重のまま)。

(三味線)

・左手下ろして右手アケで上げ、右手下ろして両手フセで上げ、両手を体側に下ろしてすぐ右に小さく跳ね上げる。このとき、左足から小さく2歩さがって左足を後ろにトン(加重せず)。

・左手下ろして右手アケで上げ、反対、左手下ろして両手フセで上げ、両手を体側に下ろしてすぐ右に小さく跳ね上げる。このとき左足から輪の向きに3歩前に進み、輪の内向きに右足を踏むと同時に左足を浮かす。

このまま冒頭に返る。

 

盆踊り唄「高い山」 佐伯市波越・石打・府坂・竹角(下堅田) < 77・75一口 、二上り>

☆高い山から谷底見ればヨ(合) 瓜や茄子の花盛り

☆高い山からお寺を見れば お寺寂しや小僧一人

☆あの子よい子だ 牡丹餅顔で 黄粉つけたらなおよかろ

☆あの子見るとて垣で目をついた あの子 目にゃ毒 気にゃ薬

☆好いてはまれば泥田の水も 飲めば甘露の味がする

メモ:波越の節は西野とそっくりで、踊り方も西野とやや似たところがある。ただし、こちらの方が手振りが複雑だし、最後にクルリと一回りするところが難しい。波越の踊りの中では簡単な方だが、何とも優雅な感じがしてなかなかよい踊りだと思う。

(踊り方)

波越 右回りの輪

・両手を腰に当てておく

「高い」 待つ。

「山から」 両手は腰に当てたまま、右足・左足、右足と継ぎ足で前に進む(チョチョチョンのリズムにて)。同様に、左足・右足、左足。3回目は右足・左足(最後の右足までいかない)。

「谷底」 両手を右に流し、左に流し(体の正面まで)、アケで肘を立て、下ろす。このとき、右足を前から右に引いて踏み、左足、右足と出て左足引き寄せて束足(左足加重)。

「見ればヨ、瓜や茄子の」 両手を右に流し、右足を前から右に引いて踏む。左手で右の袖をとりつつ右手を握りアケに返して肘から先をやや立てて前に出し、反対、反対、反対。このとき、左足を前へ踏み、右足・左足と小さく前へ。これを反対、反対、反対で、継ぎ足の連続で千鳥に進む。左に流して左足を前から引き戻して踏む。

「花盛り」 手を右に流し、左に流し(体の正面まで)、アケで肘を立て、下ろす。このとき、右足を前から右に引いて踏み、左足、右足と左前に進み左足引き寄せて束足(右足加重)。

(三味線)

・反対動作で右前に進む。

・反対動作で左前に進む。

・両手をアケで上げつつ右足を前から引き戻して後ろに踏み、両手を右に回しながら右足の前に左足をかぶせて回れ右をしながら右手を右腰に、左手を左腰に当て、右足・左足と素早く抜いてさらに回れ右をする(全く途切れずに、なめらかに右回りに1周する)。

・両手は腰に当てたまま、右足、左足と外八文字を踏む。

このまま冒頭に返る。

 

 

 

●●● ご繁昌 ●●●

 陰旋のあっさりとした節で、宴席にて斉唱するのに向いていそうである。文句もおめでたい内容ばかりの寄せ集めであり、おそらく婚礼や新年会その他のお座で唄われた祝儀唄の類が三弦化したものだろう。テンポが軽やかだし三味線も賑やかで、うきうきした雰囲気がとてもよい。

 

盆踊り唄「ご繁昌」 佐伯市西野(下堅田) <小唄、二上り、男踊り>

☆これな座敷はめでたい座敷 鶴と亀とが舞い遊ぶ(ドッコイ)

 これもお家の福となる おお、ご繁昌エー ソレ(合) トコ(合) ソレ

☆これなお庭に茗荷と蕗よ 茗荷めでたや蕗繁盛 これもお家の福となる

☆これなおうちに二又榎木 榎実ならいで金がなる これもお家の福となる

☆飲めや大黒 唄えや恵比寿 中で酌する宇迦の神 これもお家の福となる

☆年の始めに若水むかえ 長い柄杓で宝汲む これもお家の福となる

☆お前や百までわしゃ九十九まで ともに命のある限り ともに命のある限り

☆智慧の海山 唐高麗の 寄せ物細工 からくりの 夜毎走るが智慧くらべ

☆お前や釣竿わしゃ池の鮒 釣り上げられてお座敷の 酒の肴となるわいな

☆これなお庭に井戸掘りすえて 水はもちろん金が湧く これもお家の福となる

メモ:西野の唄い方では首句でいえば「めでたい座敷」の「めで」が地口になっており、そこが何とも力強く、いよいよおめでたさが増す感じがする。手拭踊りで、ずいぶん風変りな所作が目立つ。間合いの取りにくいところがあり、しかも足運びも忙しく、なかなか難しい。しかし西野に伝わる10種類以上の踊りの中では特に人気が高く、ハネ前の踊りということもあるのだろうがお年寄りから子供までよく踊り、2重3重の輪が立っている。あまり優雅な雰囲気ではないが派手だし、珍しさもあって人目を引く踊りである。

(踊り方)

西野 右回りの輪(細く畳んだ手拭)

・手拭の両端をそれぞれの手で持ち横に伸ばして(※手拭は握るのではなく伸ばした指の間で挟むとよい)、輪の中を向いた状態から

「これな座敷は」 腰をやや曲げて両手を低く下ろして左に2回巻いて左に置くように止める。このとき、左足から急いで3歩左に横移動して、左足の前に右足をトンとつく(加重せず)。手拭の落ち方はそのままで、右に低く2回巻いて右に置くように止める。このとき、足運びは反対動作で急いで右に移動する。

「めで」 左足を左に置き、両足肩幅に開いて手拭を横に伸ばしたまま両手をまっすぐ上に上げる。

「たい座敷」 1呼間休んでから、手拭は横に伸ばしたまま両手を右下へ、左下へと∞を描くように交互に6回振るが、最後は左下に大きく振ってすぐ右上に跳ね戻す。そのまま手拭を首にかける。このとき、足は1呼間休んでから右から交互に5歩その場で踏み6歩目の左足はトンとついて加重せず、手拭をかけるときにもう1度左足を踏み直して加重する。

「鶴と亀とが」 腰をやや曲げて両手をフセにて低く下ろして右に2回巻き右に置くように止める。このとき、右足から急いで3歩右に横移動して、右足の前に左足をトンとつく(加重せず)。反対動作で急いで左に移動する。

「舞」 首の両側から垂れた手拭の端を両手でとって頭を越して外しながら、右足を右に下ろして肩幅で立つ(左足に加重のまま)。

「い遊」 手拭は横に伸ばして両手を右下へ、左下へ、右下へと∞を描くように交互に3回振る。このとき、右足から3歩その場で踏む。

「ぶ、ドッコイ」 両手を上げて、手拭は頭の上を越して首にかける。このとき、左足から大きく2歩で体をかがめながら左に回り込み輪の外向きになる。

「これもお家の福とな」 両手を手拭から離して下ろし、両手を振り上げて「おーい」と呼ぶときの格好になる。このとき、左足を右足の前に交叉して大きく踏み込み、右に反転して輪の中を向き右足を右にトン(加重せず)にて、輪の中からやや右向きになる。同様に両手を下ろして右足を左向きに踏みかえては呼びかけの手振りで左足を左にトン(加重せず)にて、輪の中からやや左向きになる。さらに反対動作。

「る」 両手を下ろしつつ左に回り右回りの輪の向きになる(左足に加重)。

「おお」 前にて大きく手拍子で右足を前に踏み込む、

「ご繁昌エー、ソレ」 右足を後ろに引いて加重し反り返りながら左手、右手の順におもむろに腰に当て、空を見上げて威張り、末尾にて姿勢を戻しつつ左足に体重を移す。

(三味線)

・両手を揃えて右上にチョンチョンと小さく流し上げつつ、足は右左、右と急いで歩いて右に回っていく。その反対動作でさらに右に回っていく(その場で1周)。

・両手を右に流して右足を後ろに踏むと同時に左足を浮かせる。左手下ろして右手アケで上げ、右手下ろして両手フセで上げ…と両手交互に4回上下で、5回目は両手フセで上げ、両手を体側に下ろす。左足から5歩前に進み、輪の中向きに左足トンで束足(右足に加重)。

・両手を振り上げて「オーイ」の形にて左足を左向きにトンとつき(加重せず)左を向いて、左足を肩幅の位置に踏みかえて輪の中向きに戻る。ここは1呼間に押し込める。手拭を首にかけたまま左右の垂れをそれぞれの手で持ち、ピッと開いて閉じるのを3回繰り返す。手拭を開くときに右足を右向きにトンとついて(加重せず)右を向き、閉じるときに右足を肩幅に踏んで輪の中を向く。同様に足運びを反対、反対で左向き、輪の中向き、右向き、輪の中向き。

・右手で首の右側に下がっている手拭を左下にシュッと引き下ろして外し、左下に下りてきた反対側の端を左手でとり、両手で手拭を横に伸ばして持つ。このとき足は肩幅に開いて立ったまま、動かさない。

このまま冒頭に返る。

 

盆踊り唄「智慧のうみやま」 佐伯市波越(下堅田) <小唄、二上り>

☆智慧のうみやま唐高麗の(合) 寄せ物細工カラクリの(アラドッコイ)

 智慧と竹田の知恵くらべ アーそうじゃいな(ソレジャワナ ソレジャワナ)

☆お前や百までわしゃ九十九まで ともに白髪の生えるまで ともに白髪の生えるまで

☆恋し小川の鵜の鳥見やれ 鮎をくわえて瀬をのぼる 鮎をくわえて瀬をのぼる

メモ:西野の「ご繁昌」とほとんど同じ節だが、三味線の手がやや節が細かくてより華やかな印象を受ける。また、「ああそうじゃいな」の後の三味線が、西野のよりも少し短い。踊りは「ご繁昌」と同じく手拭を使うが、こちらの方がずっと易しい。

(踊り方)

波越 右回りの輪(細く畳んだ手拭)

・手拭を右肩にひっかけて、右肩前にたれた端を右手で持ち、右足を引いて待つ(右足加重)。

「智慧」 左足に加重する。

「の」 右足を前に踏み出しながら、右手で手拭を引き下ろし反対の端を左手でつかむ。

「うみ」 手拭を横に開いて左上に上げながら左足を前に踏み、両手を閉じて手拭をたるませながら左足を右足に引き寄せて束足(左足加重)。

「やま」 反対動作

「唐高麗の」 手拭を横に開き、両手を揃えて高く上げて左、右、右、左、左、右、左と小さく流す。このとき、左足、右足左足、右足、左足右足、左足、右足、左足と歩いてその場で右回りに1周する。

(三味線) 手拭の持ち方は同じ(左右に開く)で、下ろして右上へ2呼間で上げ、下ろしてから左上へ2呼間で上げる。このとき、右足、左足とゆっくり進む。

「寄せ物ざ」 左足に加重したまま右足を右前に出し、右手を右上に上げていき手拭を右側に立て、末尾にて右足に加重する。

「いく」 両手を下ろして手拭を横に開き左上に上げながら左足を前に踏み、両手を閉じて手拭をたるませながら左足を右足に引き寄せて束足(左足加重)。

「カラ」 そのまま待つ。

「クリ」 両手を下ろして手拭を横に開き右上へ2呼間で上げ、右足を踏み出す。

「の、アラドッコイ」 早間にて、両手を下ろして左上へ、下ろして右上へ。左足・右足と踏みかえる。

「智慧と竹田の」 手拭が頭を越すようにして首にかけながら(首にかかってからも前に垂れた両端を持ったまま)左足・右足と前に出て、手はそのままに左足、右足とさがる。

「知恵」 そのまま待つ。

「くらべ」 手はそのままに、早間にて左足、右足とさがる。

「アーそうじゃいな」 手拭の左端を後ろに外して(右肩にかかるようにする)、すぐに胸前でごく小さく手拍子1回。このとき、早間にて左足、右足と前に出る。そのまま早間にて左足、右足とさがると同時に両手フセで顔の上に跳ね上げて左足を浮かし、左足を下ろして加重。

「ソレジャワナーソレジャワナ」 両手を揃えて右上、右上、左上、左上と小さく流しながら、右足・左足、右足、左足・右足、左足と早間で右回りに半周する。

(三味線)

・そのまま、右、左と流しながら右から2歩でもう半周、都合1周にて元の向きに返る。

・両手を右に振って左手は曲げて胸に、右手は右にアケで伸ばす。その反対で左に振る。それに合わせて、右足、左足と外八文字を踏むように引き戻していく。

・もう一度、両手を右に振って左手は曲げて胸に、右手は右にアケで伸ばして右足を前に出し(加重せず)、右手を戻しながら右肩前の手拭を右手で持ち、右足を後ろに踏む。

※右足を後ろに踏んだらすぐさま、冒頭に返る。

 

 

 

●●● 本調子(その1) ●●●

 この唄は古い流行小唄で、藤本二三吉の吹き込んだ端唄「竹になりたや」と同種である。流行小唄・端唄としては全く廃絶しているも、全国各地で座興唄として採集されている。たとえば山形の「菊と桔梗」もこの仲間で、市丸がレコードに吹き込んだこともあり、この種の唄としてはこれが最もよく知られているだろう。堅田踊りの演目としては節の特徴からいくつかのグループに分けられる。最もオーソドックスなものを「その1」とするが、残念ながら「その1」のグループの演目は廃絶している。

 

盆踊り唄「本調子」 佐伯市泥谷(下堅田)、蒲江町屋形島(蒲江) <小唄、本調子>

△オイヤ桶屋さん門中で 底つきなき輪を締めしゃんせ

 やっぱり本輪がよいわいな

☆ハイヤハー 船は出て行く帆かけて走る(アリャアリャアリャ)

 茶屋の娘が(合) 出て招く ヤー(合) ヤー(合) 招けど船は寄らばこそ

 思い切れとの風が吹く(イヤマダマダ) ソレソレソレ ホンカイナ(ハー)

☆竹になりたや紫竹の竹に もとは尺八 中は笛

 裏はそもじの筆の軸 思い参らせ候かしこ

☆文はやりたし書く手は持たぬ やるぞ白紙 文と読め

 書いたる文さえ読めないわしが まして白紙なんと読む

☆梅も八重咲く桜も八重に なぜに朝顔 一重咲く

 わしは朝日に憎まれて お日の出ぬ間にちらと咲く

☆ここは色街 廓の茶屋よ のれん引き上げ お軽さん

 由良之助さんわしゃここに 風に吹かれているわいな

☆鷺を烏と見たのが無理か 一羽の鳥さえ鶏と

 雪という字も墨で書く あおいの花も赤く咲く

メモ:泥谷では、今は全く踊られていないが、高齢の人の中には今でも踊りを覚えている人がようだ。「思案橋や本調子はほんとによい踊りだったのに、踊らなくなってしまい残念だ」というような内容を話してくれた人がいたのだが、難しい踊りだったらしいので復活させるのはなかなか難しいだろう。

 

盆踊り唄「ほんかいな」 佐伯市波越(下堅田) <小唄、本調子>

☆船は出てゆく帆かけて走る(イヤマダマダマダ)

 茶屋の娘が出て招く ヤー(合) ヤー(合) ソイ

 招けど船の(アーヨイトセー) 寄らばこそ

 思い切れとの風が吹く(イヤマダマダ)

 ソーレソレソレ ほんかいな ヤー(合) ヤー(合) ソイ

メモ:泥谷の「本調子」と同じ唄だが、三味線の手が違う。こちらは「ヤレソレソレほんかいな」の後もチントンシャン、チントンシャンの繰り返しだけですぐ次の文句に入る。高調子の難しい唄で間合いが取りにくい。扇子踊りだった由。残念ながら廃絶している。

 

 

 

●●● 本調子(その2) ●●●

 こちらは「その1」を陰旋にして若干、間を詰めたものである。こちらの方がずっと易しく、覚えやすい。おそらく「その1」の方が元で、そこから新しい節が分かれたのが「その2」なのだろう。流行小唄あるいは端唄のそれとしては同種のものが見当たらないが、おそらく堅田にて「その1」から「その2」が派生したのではなく、同系統の別物として入ってきた可能性が高い。おそらく元唄の流行が短く、とうに廃ってしまっており採集の網にかからなかったものと思われる。

 今では西野に残るのみとなっているが、西野では盛んに踊られており当分の間は残っていくだろう。

 

盆踊り唄「無理かいな」 佐伯市波越(下堅田) <小唄、本調子>

☆江戸に姉さん大阪に妹(合) 母は京都の(合) 島原に

 花じゃなけれども散り散りに 開けて悔しい玉手箱 思うてみさんせ無理かいな

メモ:綾棒を持って踊っていたらしい。残念ながら廃絶している。

 

盆踊り唄「花笠」 佐伯市西野(下堅田) <小唄、本調子、女踊り>

☆菊も八重咲く桜も八重に(合) なぜに朝顔(ヨイトセ) 一重と咲く

 わしは一重に咲きかねて お日の出ぬ間にちらと咲く

 思うてみさんせ無理かいな ソレ

☆鷺を烏と見たのが無理か 一羽の鳥さえ鶏と

 雪という字も墨で書く あおいの花も赤く咲く 思うてみさんせ無理かいな

☆会いた見たさは飛び立つごとく かごの鳥かや ままならぬ

 かごの鳥ではなけれども 親が許さぬかごの鳥 思うてみさんせ無理かいな

☆竹になりたや紫竹の竹に もとは尺八 中は笛

 裏はそもじの筆の軸 思い参らせ候かしこ 思うてみさんせ無理かいな

☆文はやりたし書く手は持たぬ やるぞ白紙 文と読め

 書いたる文さえ読めないわしが まして白紙なんと読む 思うてみさんせ無理かいな

☆江戸にあねさん大阪に妹 母は京都の島原へ

 花じゃなけれど散り散りと 開けて悔しき玉手箱 思うてみさんせ無理かいな

メモ:波越の「無理かいな」と全く同じ唄だが、三味線が違う。全体的には陰旋だが、「菊も八重咲く」の文句でいうと「わしは一重に咲きかねて」のところが一瞬陽旋になるような音程を持っており、その響きがいかにもお座敷唄風である。「ほんかいな」と「無理かいな」は兄弟関係のようなもので、文句を互いに融通できる。その内容をみると「竹になりたや」とか「船は出ていく」などの通り一遍なものはともかく、「鷺を烏と」や「江戸にあねさん」などなかなか機微に富んだ文句もある。各節には連絡がなく、字脚が合えば何でもよい。おそらく昔はもっとたくさんの文句があったのではないかと思う。西野では今なお盛んに踊られている。昔は花笠などを使ったのだろうが、今は扇子2本で踊る。扇子は開きっぱなしで、同じ所作の繰り返しばかりなので覚えやすい。

(踊り方)

波越 右回りの輪(開いた扇子を2つ)

「菊も八重咲く」 右手はアケで扇子を右肩近くに引き上げ、左手はフセで扇子が水平になるように持って左前に低く伸ばしながら、左足を前に出す(加重せず)。もう1度同じ手で、左足を同じ位置に出して加重する。手を逆にして、右足(加重せず)、右足。同様に、左足(加重せず)、左足、右足(加重せず)。

「桜も八重」 左手は左肩近くに引き上げたまま動かさず、右手の扇子の面を立てて右、左、右、左と低く振る。このとき、その場にて右足から交互に4回、前から引き戻して踏む。

「に」 同様に左手は動かさず、右手を右に低く振り右足を踏む(半呼間)。

(三味線)

・右手はアケで扇子を右肩近くに引き上げ、左手はフセで扇子が水平になるように持って左前に低く伸ばしながら、左足を前に出す(加重せず)。もう1度同じ手で、左足を同じ位置に出して加重する(半呼間)。

・手を逆にして、右足(加重せず)、右足(ここは1呼間とる)。

※上記の左、左、右、右でその場で右に半周する。

「なぜに朝顔、ヨイト」 同様に、左、左、右、右でその場で右に半周、都合1周となる。そのまま続けて左、左、右(加重せず)と進む。

「セー、一重と咲く、わ」 両手の扇子の面を立てて、右から交互に6回、両手を低く振る。このとき、右足から交互に6回、前から引き戻して踏みながら小さく進む。

「しは一重に咲き」 両手を右側にアケで開き下ろしながら、右足を右向きに伸ばして出し(加重せず)て右を向き、上体を少し前に倒す。上体を起こしつつ両手を上げていきながら右足を左足に揃えて束に踏む。反対動作にて、左側に開き下ろしては上げる。同様に右側に下ろして上げ、左側に下ろして上げる。

「かねて」 いま、両方の扇子が顔の高さに上がっている。ここから、右の扇子は左に横八の字で半周回して再度アケに返したら谷を描くようにカーブしながら右肩外まで引き上げていく。左の扇子は、右に倒してフセにしたら左に小さく巻いて左下に伏せ伸ばしていく。両手の動きと同時に右足を後ろに引いて加重、右ひざを曲げて上体を後ろに傾けながら右向きから体をひねって腰を入れ、正面向きにて静止で決まる。

「お日の出ぬ間にちらと咲く」 半呼間遅れて、両手を顔の高さに上げながら左足に踏み戻す。先ほどと同様に両手を右側にアケで開き下ろしながら、右足を右向きに伸ばして出し(加重せず)て右を向き、上体を少し前に倒す。上体を起こしつつ両手を上げていきながら右足を左足に揃えて束に踏む。反対動作にて、左側に開き下ろしては上げる。同様に右側に下ろして上げ、左側に下ろして上げる。

「思うてみさんせ無理かい」 両手の扇子の面を立てて、右、右、左、右、左、右と両手を低く振る。このとき、右足、右足、左足、右足、左足、右足と前から引き戻して踏みながら小さく進む。

「な、ソレ」 左の扇子は、左に山型に振ってアケにしたら、そこから左肩近くに引き上げていく。右の扇子は、左に振ってそのまま右下に伏せ伸ばしていく。両手の動きと同時に左足を後ろに引いて加重、左ひざを曲げて上体を少し後ろに傾けながら左向きから体をひねって腰を入れ、正面向きにて静止で決まる。

(三味線)

・右の扇子と左の扇子を体前にて重ね合わせて水平に持ち、ごく小さく右、右と動かしながら右足・左足、右足と早間で前に進む。反対動作でさらに進む。

・扇子を重ねたまま、体前にてごく小さく3回手前に引く。このとき、右足から交互に3回、ごく小さく外八文字を踏む(末尾は半呼間)。

・右手はアケで扇子を右肩近くに引き上げ、左手はフセで扇子が水平になるように持って左前に低く伸ばしながら、左足を前に出す(加重せず)。もう1度同じ手で、左足を同じ位置に出して加重する(半呼間)。

・手を逆にして、右足(加重せず)、右足(ここは1呼間とる)。

このまま冒頭に返る(所作は交互で連続している)。

 

 

 

●●● 本調子(その3) ●●●

 これは「その1」「その2」とはずいぶん毛色が違っており、扱いに迷う。「その2」の節をのばして都節音階にしたらそれなりにこの節に近くなるような気もするので、一応連番としてみた。全体的に重々しい雰囲気の節で、音域が広くなかなか難しい。各節の結びをぐっとせり上げて引き伸ばすところが耳に残る。

 この唄は今では西野に残るのみとなっており、古い唄本など繰ってみても類似のものが見当たらないが、元は上方あたりの流行小唄なのだろう。

 

盆踊り唄「花扇」 佐伯市西野(下堅田) <小唄、本調子、女踊り>

☆三五の月の乱れ髪(合) 兼ねて逢いたさ 見たさをば

 その日の契りカネつけて ソリャ(合) ソリャ(合)

 末はお前に任せる身じゃぞえ

☆熊谷次郎真実は 須磨の浦にて敦盛を

 打ちて無情を悟りしが 末は蓮浄法師となる身じゃぞえ

☆千鳥も今はこの里に いとし可愛いの源太さん

 鎧代わりに三百両 辛や無間の鐘つく身じゃぞえ

☆手樽の山に差し向い 茶碗引き寄せ二つ三つ

 たがやき水の香りぞや 顔に紅葉がちりちりぱっとえ

☆軒端を伝う鶯の いとし恋しに来たものに

 もとの古巣に帰れとは あまりつれなや情けないぞえ

メモ:文句を見てみると「千鳥も今は」「手樽の山に」の文句は元ネタを知らないと意味が通りにくいが、5首全てがよくできている。踊りは西野に伝わる女踊りの中でも難しい方で、輪がとても小さくなってしまう。せいぜい10人か15人程度しか踊っていないことが多い。扇子1本の踊りだが、扇子を2本使う「花笠」よりも難しい。何回も扇子を上げ下げして一回りするところや、後ろに傾くところなど所作がたいへん難しく、特に後者はただ傾くのではなく、体を捻じ曲げるようにしてシナをつけため、何ともいえない雰囲気がある。この所作だけでも見ものだし、扇子を勢いよくパッと開いたかと思えばすぐさま最初の手に返り、静かに両手を上げ下げするところなどもメリハリがあって、とてもよく工夫されている。一応輪踊りの体をなしてはいるが、これを少し工夫して組踊りにでもすれば、正面踊りとしても立派に通用すると思われる。

(踊り方)

西野 右回りの輪(右手に開いた扇子)

「三五の月の」 両手を右側にアケで開き下ろしながら、右足を右向きに伸ばして出して(加重せず)、上体を少し前に倒す。上体を起こしつつ両手を上げていきながら右足を左足に揃えて束に踏む。反対動作にて、左側に開き下ろしては上げる。同様に右側、左側。左手を腰に当て、扇子をアケに返して体前に引き寄せながら、右足を輪の中向きに伸ばして出して(加重せず)、上体を少し前に倒す。

「乱れ髪」 輪の中を向いて左手はそのままに、右足加重にて右手を巻くようにしてフセに返した扇子を前方高くにせり上げてかざしながら左足をトン、すぐさま左足を元の位置に踏み直してアケに返しながら引き戻し体前に寄せる。

(三味線)

・左手はそのまま、右足加重にて再度フセに返した扇子を前方高くにせりあげてかざし、左足をトンできまる。

「兼ね」 両手を体側に下ろし、左足を踏み直して右輪の向きに戻る。

「て逢いたさ」 両手をフセにて高く上げながら左足・右足と早間で進み、そのままアケに返して扇子の角に左手をあてて左に小さく動かしながら左足を前に踏む。扇子を両手で持ったまま右下に下ろしながら右足・左足と早間で進み、再度右下に扇子を下ろして左手を扇子から離して両手をそのままフセに移行しつつ右足を前に踏む。両手を高く上げながら左足・右足と早間で進み、そのままアケに返して扇子の角に左手をあてて左に小さく動かしながら左足を前に踏む。 ※「アケ」「フセ」と書いたが実際は、扇子の面が垂直になっている。

「見たさをば」 両手をフセ(扇子の面は垂直)に返して、右前から左右交互に4回流して右足から4歩進み、輪の中向きに右足を踏み込み左手は腰、扇子を高くせり上げてかざして左足トン、すぐに左足を踏み直す。

「その日の契り」 左手はそのままに、扇子をアケに返して体前に引き寄せながら右足を右前に踏み、 右手を巻くようにしてフセに返した扇子を高く上げてかざしながら左足を右前に踏み、同様に右足を右前、左足を右前、右足を右前。ここまでの5歩で右回りに3/4周し右輪の向きにて、右足が前に来ている。足は動かさずに、右手を巻くようにしてフセに返したら左手を腰から離し、両手をフセにてピッと開き上げる。

「カネつけて、ソリャ」 左手は腰に当て、扇子をアケに返して体前に引き寄せながら左足に加重して、上体を少し前に倒す。右手を巻くようにしてフセに返した扇子を前方高くにせり上げてかざしながら右足を輪の内向きに踏み、すぐさま左足に踏み戻して扇子をアケに返しながら引き戻し体前に寄せる。右足に踏み戻して、再度フセに返した扇子を前方高くにせりあげてかざし、左足をトンできまる。

(三味線)

・両手を下ろす。フセで上げて両手を外に巻いてアケにて体前に寄せる。このとき、左足を右輪の向きに踏み、右足を右後ろにトンでやや右前向きになる。

・再度、両手をフセからの外巻きにてアケで体前に寄せると同時に扇子を親骨1本残して畳む。このとき、右足、左足と右輪の向きに踏み束足になる。

「今はお前に任せる」 両手で袖をとって(右手は扇子を握り返して柄が上になるようにして袖と一緒に握る)、肘から先だけを左・右、右・左と振る。足も左足・右足、右足・左足と小さく進む。同様に、手と足を同じにして左から交互に7歩、小さく進む。

「身じゃそえ」 右足を後ろに引き、左手で右の袂をとりながら右手でぐっと右肩まで引き上げつつ右ひざを曲げて、後ろに傾いてきまる。このとき、上体を後ろに傾けながら右向きから体をひねって腰を入れ、正面向きになるようにすると格好がよい。

(三味線)

・一振りで扇子を開きつつ右足から早間で2歩進む。

・両手を右側にアケで開き下ろしながら、右足を右向きに伸ばして出して(加重せず)、上体を少し前に倒す。上体を起こしつつ両手を上げていきながら右足を左足に揃えて束に踏む。反対動作にて、左側に開き下ろしては上げる。

このまま冒頭に返る。実際には所作が連続している。

 

 

 

●●● 心中づくし ●●●

 このグループの盆踊り唄としては堅田踊りの「しんじゅ」、山路踊りの唄「酒宴づくし」、蒲江の「繁昌づくし」があり、ほかに県内他地域では白熊唄としても伝承されている。堅田踊りも山路踊りも上方由来とのことなので、上方の流行小唄か何かの転用なのだろうが、『音曲全集』シリーズの『俗曲全集』や『民謡大観』、また古い唄本などを繰ってみても、残念ながら同種の唄が見当たらなかった。全く正体不明ではあるが大分県だけで唄われたとは考え難い。他県では早々に衰退し、採集の網にかからなかっただけだろう。

 酒宴の騒ぎ唄にしてはやや大仰な感じがする節で、陽旋の中に一部陰旋化しているところがあったり、ことさらな音引きがあったりと唄うにはなかなか難しい。それでも、文句の内容をみると「しんじゅ」「酒宴づくし」「繁盛づくし」それぞれに「ものはづくし」の形態をとっているばかりか、「酒宴づくし」「繁盛づくし」は数え唄にもなっており、やはり騒ぎ唄の類が変化したものと思われる。

 

盆踊り唄「しんじゅ」 佐伯市西野(下堅田)、蒲江町屋形島(蒲江) <小唄、三下り、女踊り>

☆(ヤレーソレーソレー ヤートーヤレーソレーヤー)

 十三鐘の春姫は(ハーソコラデセーイ) 鹿を殺せしその咎ゆえに

 今は(コラセイ) 十三鐘つく しんじゅ

☆かの源の頼光は 大江山なる鬼神を退治 今は都も収まる しんじゅ

☆かの源の義賢は 源氏白旗こまんに渡し すぐにその場で腹切る しんじゅ

☆大阪椀屋久右衛門 太い身代丸山通い 今は編み笠一つの しんじゅ

メモ:唄い出しの節が意表をついている。例えば「十三鐘つくしんじゅ」の後に三味線の長い合の手を挿んで「ヤレーソレーソレー、ヤートーヤレーソレーヤー」の囃子からの連続で「かの源の」と唄い始めるため、あたかも前の文句の節がまだ続いているかのように錯覚してしまう。主首でいえば「十三鐘の春姫は」のところが高調子で、しかもこれでもかというくらいに節を引っ張るので、ここが非常に唄いづらい。その後もなかなか難しい節が続き、引っ張り引っ張り唄って行ったかと思えば「今は」「十三」「しんじゅ」でそれぞれストンと切れるように止めるところに面白味がある。また、音程にはほんのりと典雅な雰囲気が漂う。踊りは手踊りで、手数が非常に多く80呼間程度にも及ぶ。全体的に間が取りづらく、音頭や三味線が少しでも間違えれば踊りが立ち往生してしまう。あまりに踊りが難しく、10人かそこらの、ごく小さい輪が立つのがやっとである。

(踊り方)

右回りの輪

「ヤレーソレーソレ」 左交互に流しながら、左足から3歩進む。

「エーヤートーヤレーソレー」 両手を右側にアケで開き下ろしながら、右足を右向きに伸ばして出して(加重せず)、上体を少し前に倒す。上体を起こしつつ両手を上げていきながら右足を左足に揃えて束に踏む。反対動作にて、左側に開き下ろしては上げる。

「ヤー、十三鐘の」 両手を右下・右下、左上・左上…と2回ずつを交互に6回出す(最後のみ左に流す)。このとき、右足・左足、右足と継ぎ足で、その反対、反対…と前に進んでいく。

「春姫は、ハソコラデセーイ」 右、左と流して右足から2歩進み、両手を右側にアケで開き下ろしながら、右足を右向きに伸ばして出して(加重せず)、上体を少し前に倒す。上体を起こしつつ両手を上げていきながら右足を左足に揃えて束に踏む。左足を左前に踏みかえて両手を左下に下ろしつつ上体を左にひねり、そのまま両手を右上に上げつつ左足を右向きに踏みかえて加重、右を向いて両手首を右上にて返して右足に加重、両手を静かに下ろしつつ上体を左にひねる。

「鹿を」 両手をアケで左上に上げて手首を返し、左足を右向きに踏みかえて加重し右足も右向きに踏みかえて静かに右下に伏せ流し、右足を元の向きに踏み直す。

「殺せしその咎ゆえに」 右手を右に差し伸ばし、左手をアケで左上に上げたら手首を返して、右手にかぶせるように静かに手拍子。このとき左足を前に踏み、右足を右前向きに出す。この反対、反対。両手を揃えて左、右と振り、左足・右足と外八文字を踏む(末尾にて右の袖を左手で取り輪の中向きに右手をアケで下ろす)。右の袖を左手でとったまま、輪の中向きに右足を踏み込んで、右手をアケ上げて手首を返してかざし、左足トンできまる。

「今は、コラセイ」 両手を振り上げて左足を左に出し、両手を左下に下ろしつつ右足を左足の前に交叉して上体を左にひねったらすぐ左足を抜いて左に出し、そのまま両手を右上に上げつつ左足を右向きに踏み、右を向いて両手首を右上にて返して右足に加重、両手を静かに下ろしつつ上体を左にひねる。

「十三」 両手をアケで左上に上げて手首を返し、左足を右向きに踏みかえて加重し右足も右向きに踏みかえて静かに右下に伏せ流し、右足を元の向きに踏み直す。

「鐘つくしんじゅ」 両手をアケで左上に上げて手首を返し、左足を右向きに踏みかえて加重し右足も右向きに踏みかえて静かに右下に伏せ流し、体を後ろに傾け上体を右にめいっぱいひねって後ろを見返り、正面向きに直る。

(三味線)

・胸前にて両手首を手前に軽く握りながら返して、アケで親指以外を伸ばすと同時に右足後退。手は同じで、左足後退。

・手拍子、右手を右腿におろし、左手を左腿におろす。

・両手を右上に振り上げながら右足の前に左足を踏み、両手を左下に下ろしながら左足の前に右足を踏む。

・アケで、左手、右手、両手の順に振り上げながら左足から交互にその場で蹴り出し、右に流して右足を前に踏む。

これで冒頭に返る。所作は連続しており、末尾から見ると、右から交互に都合4回流すことになる。

 

盆踊り唄「繁昌づくし」 蒲江町波当津浦(名護屋) <小唄>

☆さて正月は大黒の ハーソコラデセー 根松ゆずれし裏白飾る

 手まりオイナ 破魔弓オイナ 羽根突く繁昌

 ハーシテコイナー マッカショエ ヤトセ ハレバリヤン

☆二月小なる初子の日 子の日遊びといずこの人が 茶屋や酒屋や出店の繁昌

☆さて三月は大名衆の 日にも間もないお江戸の勤め 彼方此方や出代わり繁昌

☆四月小なる朔日に 戌の吉日麦刈り初めて 刈るも豊かや釜戸の繁昌

☆五月めでたや辰の日に 稲を刈る日に田を植え初めて 田植音頭でちょうとめ繁昌

☆さて六月はお祇園の 祇園祭りは中旬の頃 氏子賑わし芝居繁昌

☆さて七月は盂蘭盆の 先祖供養は精霊で送る 浴衣 折笠 踊り子の繁昌

☆さて八月はお彼岸の 羽織袴や麻裃で 彼岸参りはお寺の繁昌

☆九月めでたの百姓衆の 稲の実りの終いであれば 倉に詰めおく俵の繁昌

☆さて十月は初亥の日 亥の子祝いといずこの人が 餅を搗き搗きお祝い繁昌

☆さて霜月は大切な 神に神楽は太夫衆の手芸 秋が勇めば氏子の繁昌

☆師走めでたや大晦日に 飾るつるの葉お鏡餅に 揃うた笑顔は御家内繁昌

メモ:十二月数え唄になっていて、とてもおめでたい文句である。おそらく、かつては寄合や門付の祝儀唄としても唄われたのだろう。

 

 

 

●●● 初春 ●●●

 この唄は「しんじゅ」と同種のような気もするのだが、節があまりに違っているため一応別項立てとした。

 

盆踊り唄「初春」 佐伯市黒沢(青山) <小唄>

☆明けて初春 初夢に(ヨーイ) 恋という字を帆にあげて お客を(ヨイセ)

 乗せます宝船 ハーヤレ イヤソレ ソレソレ ヨーイヤナー

☆もはや紋日の 如月の 客を待つ夜のその長さ 道理じゃ 今年は午の年

メモ:民謡緊急調査では2節しか採集されていないも、元は十二月数え唄になっていたのだろう。文句を見ると同じ十二月数え唄でも、「繁盛づくし」とは違って遊郭の雰囲気が色濃い。