分類別の盆踊り唄集 その7

●●● 伊勢音頭(その1) ●●●

 由布院から大野・直入方面で唄われる節を集めた。県内の伊勢音頭の中では最もテンポがのろまな部類で、所謂「道中伊勢音頭」の節をさらに引き伸ばしたようなものである。

 

1-1-1 盆踊り唄「しょうご節」 挾間町朴木(由布川) <77・75一口>

☆あなたナー ゆえなら(ハハヨイヨイ)

 わしゃどこまでも(アラソーコセー ソーコセー)

 「アラ正月二月は神の月 花の三月 桃の花

  飲みの四月に蚊の五月 コラ 六月土用が晴天で

  盆の七月来たならば 踊ろが競ろがそりゃままよ

  竹の八月 木の九月 コラ 十月木の葉の落ちるまで

  霜月霜の降る夜さも コラ アラ極月 雪の降る日まで

 待ってナー いますよ コラヤンレショ どこまでも

 (アラソレカラ ヤートコセーノ ヨーイヨナ)

 (アラ アレワイセー コレワイセーノ しょうご節)

☆今宵 逢いましょ 踊りの中で 紅緒 ぞうりを 目印に

 

1-1-2 盆踊り唄 「二つ拍子」 湯布院町鮎川・津々良(南由布) <77・77段物>

☆ハー鈴木主水と(ヨイヨイ) いう侍は(ハーヨーコセー ヨーコセ)

 女房持ちにて コラヤーレサノ 二人の子供(アヨーイトセーノ ヨーイヨナ

 アレワイセー コレワイセーノ ナンデモセー)

☆二人子供の あるその中で 日にち毎日女郎買いばかり

☆ヨヤサノヨホホイ 流してみましょ

 「ハー 遥か向こうを眺むれば 十七八なる姉さんが

  ソレ着物は久留米の紺絣 帯は筑前博多帯

  ソレ足袋は白足袋柾の下駄 姉さんどこよと尋ぬれば

  ソレ田舎育ちのうぐゆすで 宿をとろうちゃ宿はなし

  ソレ梅の木小枝を宿として 明日は殿御の四十九日

  ソレいよいよ殿御の墓参り 善光寺さんに参りがけ

  ソレ善光寺さんの石段を 一段上がりてわっと泣く

  ソレ二段上がってわっと泣く 三段四段は血の涙

  ソレ上がりつむれば墓の前 石碑の前に線香立て

  ソレ紅葉のようなる手を合わせ 糸より細き声を出し

  ソレ南無阿弥陀仏と伏せ拝む

 これも入れたもの お上手のお邪魔

 

1-1-3 盆踊り唄「伊勢音頭」 大野町夏足(大野) <77・75一口>

☆伊勢へナー 七度熊野へ三度(ヨーイヨイ)

 愛宕様にはヤンレ 月まいり(アラヤートコセーノヨーイヤナ

 アーレモサイ コーレモサイ コノヨーイヤナ)

 

1-1-4 盆踊り唄「伊勢音頭」 大野町片島(大野) <77・75一口>

☆咲いたナー 桜になぜ駒つなぐ(アーソーコセー ソーコセ)

 駒がナー勇めば アーヤンレサ花が散る

 (アーソレソレ ヤートコセーノ ヨーイヨナ)

 (アレワイサ) ソレ(コレワイサー ササ ナンデーモセー)

 

1-1-5 盆踊り唄「伊勢音頭」 朝地町上尾塚(上井田) <77・75一口>

☆伊勢にゃナー 七度 熊野にゃ三度(ソーコセー ソーコセー)

 愛宕様にはヤンレサー 月参り

 (アーソラソラ ヤートコセーノ ヨーイヨナ)

 (ハレワイセー) ソコ(コレワイセー ササ ナーンデーモセー)

 

1-1-6 盆踊り唄「綾筒踊り」 朝地町志賀(上井田) <77・75一口>

☆様よ出て見よ(ソーコセーソーコセ) 御嶽山は(アーソーコセーソーコセ)

 みかん売り子が ソリャ灯をとぼす(ソレカラ ヨーイヤセーノ ヨーイヤセー)

 (ハレワイセー) ソラ(コレワイセー ササ ナーンデーモセー)

 

1-1-7 盆踊り唄「伊勢音頭」 清川村臼尾(牧口) <77・75一口>

☆伊勢にゃ七度 熊野にゃ三度(ハートーコセー トーコセー)

 愛宕様にはヤンレ 月参り(ヤーソレカラ ヤートコセーノ ヨーイヨナ)

 (ハレワイセー) ソレ(コレワイセー ササ ナーンデーモセー)

 

1-1-8 盆踊り唄「伊勢音頭」 緒方町原尻(南緒方)、辻(小富士) <77・75一口>

☆伊勢にゃナー 七度熊野にゃ三度(アーソーコセー ソーコセー)

 愛宕ナー 様には ヤンレサ月参り(ソレカラ ヤートコセーノヨーイヨナー)

 (アレワイサー) ドッコイ(コレワイサーデ ササ ナンデモセーイ)

 

1-1-9 盆踊り唄「伊勢踊り」 緒方町馬場(緒方) <77・75一口>

☆伊勢にゃナー 七度熊野に三度(アラソーコセー ソーコセー)

 愛宕ナー 様には ヤンレサ月参り(アーソーヤラ ヤートセーノヨーイヤナー)

 (アレワイセー) ドッコイ(コレワイセー ササ ナンデモセー)

 

1-1-10 盆踊り唄「伊勢音頭」 久住町都野(都野)、直入町長湯(長湯) <77・75一口>

☆伊勢にゃナ 七度熊野にゃ三度(アラソーコセー ソーコセー)

 愛宕様にはヤンデサ 月参り(アラソレカラ ヤートコセーノ ヨーイヤナ)

 アラ(ハレワイセーノ) ソコ(コレワイセーノ ササナンデモセー)

 

1-1-11 盆踊り唄「伊勢音頭」 竹田市倉木(嫗岳) <77・75一口>

☆伊勢にゃヨ 七度ナ 熊野に三度(アーソーコセー ソーコセー)

 愛宕ナ 様には ハーヤンレサ月参り(アーソレソレ ヤートコセーノ ヨーイヨナ

 アレワイセー) ドッコイ(コレワイセーデ ササ ナンデモセー)

☆さてもナ 見事なヨ 沈堕の滝は(アーソーコセー ソーコセー)

 「ソレ落て口ばかりは十二口(ソレ) 十二の落て口ゃ布引で(ソレ)

  上には大悲の観世音(ソレ) 下には大蛇が七頭」

 落つりゃヤ 大蛇の ハーヤンレサ餌となる(アーソレソレ ヤートコセーノ

 ヨーイヨナー アレワイセー) ドッコイ(コレワイセーデ ササ ナンデモセー) 

 

1-1-12 盆踊り唄「伊勢音頭」 竹田市古園(宮城) <77・75一口>

☆伊勢はナー 津でもつ津は伊勢でもつ(アラソーカセー ソーカセー)

 愛宕ナー 様には ハーヤンレサー月参り(アーソレカラ ヤートコセーノ

 ヨーイヤナー アレワイセー) ドッコイ(コレワイセーノ ササ ナンデモセー)

 

1-2-1 盆踊り唄 直入郡 ※『俚謡集』より

☆イヤ太夫さんちょいと止めた

 ソレ西行法師のぼんさんが 四国西国廻るとき

 豆腐の四角に蹴つまづき こんにゃく小骨を足に立て

 れんぎで掘れども掘れはせず 杓子でこぬれどまだ抜けぬ

 いろいろお医者にかけたれど 薬の効き目のなきために

 山で取った貝殻と 磯部でとった松虫と

 氷の黒焼きとかきまぜて 馬の角にて エヘンヘン

 混ずれや ハリャリャ コリャリャ アレワイセー

 

1-2-2 盆踊り唄 直入郡 ※『俚謡集』より

☆早野勘平が猪打ちにゃ 蓑着て笠着て鉄砲を持ち

 一谷越ゆれど猪ゃおらぬ 二の谷越ゆれど猪やおらぬ

 三国峠という峠 あれに見ゆるは猪かいな

 はやご返して二つ玉 二つ玉にて打ち止めな

 火縄の火を振り出で見れば 猪と思えば旅の客

 気付けはないかと懐を 探り当てたる縞財布

 金ならおよそ四五十両 死したるそちはいらぬ金

 はたはなければならぬ金 貸してナー アラくれとの

 ヤレたたんでおさめ キニャキニャ ヤートコセー ナンデモセー

 

 

 

●●● 伊勢音頭(その2・兵庫音頭) ●●●

 日田・玖珠方面の節のうち、テンポがのろまなものを集めた。「その1」とは系統が異なる。

 

2-1-1 盆踊り唄「坪借り」 天瀬町高塚(馬原) <77・77段物>

☆東西南北おごめんなされ(サマソーレージャー ソーレージャ)

 家にござるかご主人様よ

 「お月ゃ西々 お日様東

 ソコ(アリャリャー コリャリャ) ホイ(ヨーイートナー)

☆家にござれば願いがござる 風の便りに噂を聞けば

 「いつも出てくる淀川清水

☆ここのお宅の小父上様が ご死去なされてさぞさむしかろ

 「お月ゃ西々お日様東

☆思いがけない初盆そうな 村の若い衆やご婦人方が

 「いつも出てくる淀川清水

☆盆の供養に二舞い三舞い しばしお庭をおん貸しなされ

 「お月ゃ西々お日様東

 

2-1-2 盆踊り唄「盂蘭盆経」 九重町後野上(野上) <77・77段物>

☆寺に参りて今帰り道(ソレジャー ソレジャー)

 聞けばこなたは初盆そうで(ヨーイヨーイ ヨーイトナー

 アリャリャー コリャリャー) ソレ(ヨーイトナー)

☆さぞや今宵はお寂しかろう 大事な大事なご主人様は

 

 

 

●●● 伊勢音頭(その3・トコエー) ●●●

 玖珠から日田にかけて唄われている、一般に「トコエー」と呼ばれる節を集めた。起伏の大きい節で、殊に長囃子の入りに特徴がある。早間の傾向にあり細かい節が多く、唄い方が難しい

 

3-1-1 盆踊り唄「小屋起こし」 日田市羽田(東有田) <77・77段物>

☆兄の コラショイ 春徳 弟の梅次(アヤートサイサイ ヤートサイ)

 弟梅次は直子んなれど(トエーイソーレヤットコセ オイセッセノ ヨーイヤナ

 アレモセー コレモセッセノ ヨーイトナー)

☆兄の春徳は継子でござる そこで婆様 邪険でござる

 

3-1-2 盆踊り唄「六調子」 大山町中津尾(西大山) <77・77段物>

☆愛嬌よければ コラみなさん方に(ヤートショイショイ ヤートショイ)

 我も我もと名指して上がる(トコエーイソーリャ ヤートコセ セノヨーイヤナ

 ソリャ(アンゲナショイショイ コンゲナショイ ヤートコセー)

☆わけでお客はどなたと訊けば 春は花咲く青山辺の

 

3-1-3 盆踊り唄「六調子」 天瀬町中釣(五馬) <77・77段物>

☆夜はなおまた コラ城下の煙(アーヤートサイサイ ヤートサイ)

 井戸の中よりお菊やんの姿(トコエーイソーラ ヤートーコセ)ソコ

 (セノヨーイヤナ アレモサイサイ コレモサイ ソコヤートコセー)

☆皿をも一度 読ませてたもう 一つ二つとはや読みたてりゃ

 

3-1-4 盆踊り唄「六調子」 天瀬町高塚(馬原) <77・77段物>

☆花の(ホイホイ) お江戸の そのかたわらに(ヤートサイサイ ヤートサイ)

 聞くも珍し 心中話(サマエーイソーレ ヤートーコセ)ソコ

 (セッセノヨーイヤナ アーレモサイサイ コーレモサイ) ソコ(ヤートコセ)

 

3-1-5 盆踊り唄「六調子」 天瀬町馬原 <77・77段物>

☆国は(ハイハイ) 筑前 遠賀の国よ(ヤートサイサイ ヤートサイ)

 あしや浜の浦 太郎兵衛殿よ(サマエーイソーリャートコセ)ソコ

 (セッセノヨーイヤナ アーレワサイサイ コーレワサイ) ソコ(ヤートコセ)

☆総領息子に亀松殿よ それが妹に おしよと言うて

 

3-1-6 盆踊り唄「小屋起こし」 玖珠町浦河内(北山田) <77・77段物>

☆悪右衛(ホイホイ) 門から身を狩り出され(ヤートコサイサイ ヤートコサイ)

 保名様から身を助けられ(トコエーイソーレ ヤートコセ

 セノヨーイヤナ アーレモサー コーレモサー ヤートコセー)

☆悪右衛 門には怨みがござる 保名様にはご恩がござる

 

3-1-7 盆踊り唄「三つ拍子」 九重町飯田(飯田) <77・75一口>

☆様は 三夜の三日月様よ(トロンコセー トロンコセー)

 宵にちらりと ホイサ見たばかり(トコエーイソーリャ ヤレトコセ

 セノヨーイヨナ アレワトセー コレワトセー ヤレトコセー)

 

3-1-8 盆踊り唄「千本搗き」 九重町町田(南山田) <77・77段物>

☆花の お江戸にコラその名も高き(アリャヤートコサイサイ ヤートコサイ)

 本郷二丁目に八百屋というて(トコエーイソーリャ ヤートコセ

 セノヨーイヨナ アレワイサー コレワイサー ヤートコセー)

☆店も賑やか コラ繁盛な暮らし 折も折から正月半ば

 

 

 

●●● 伊勢音頭(その4・千本搗音頭) ●●●

 玖珠および山国川流域で唄われている節を集めた。一般に騒ぎ唄として親しまれている端唄の「伊勢音頭」を陽旋にしたもので、「その1」~「その3」に比べると非常に易しい。

 

4-1-1 盆踊り唄「ばんば踊り」 日田市財津町(三花) <77・77段物>

☆聞けばお宅はお初の盆と(ハヨイヨイ)

 財津若い衆 年寄り子供(ソリャヨーイヨーイヨーイヤナ

 アレワイサッサノ コレワイサ ヨーイトナ)

☆みんな揃うて踊りに来たが うちにござるかご主人様よ

 

4-1-2 盆踊り唄「ヨイトナ」 日田市殿町(小野) <77・77段物>

☆国は山陰その名も高き(アヨイヨイ) 武家の家老に一人のせがれ

 (ソリャ ヨーイヨーイヨーイトナ アレワイサ コレワイサ ヨイトナ)

☆平井権八直則こそは 犬の喧嘩が遺恨となりて

 

4-1-3 盆踊り唄「千本搗き」 日田市羽田(東有田) <77・75一口>

☆わしとナー あなたは硯の墨よ(アレワイセー コレワイセー)

 すればナー するほど ヤンサ濃ゆくなる

 「庭の下り藤ゃ朝まじゃもたぬ

 (アレワイセー コレワイセー セノヨーイトナー)

☆咲いた桜になぜ駒つなぐ 駒が勇めば花が散る

 

4-1-4 盆踊り唄「千本搗き」 玖珠町浦河内(北山田) <77・77段物>

☆お菊ヨー もろとも井筒のもとへ(アーレモサイサイ コーレモサイ)

 行くやヨー 遅しと鉄山こそはヨ(ヤットセーノヨーイヤナ

 アーレモサー コーレモサ セノヨーイトナー)

☆箱の 中なるお菊の什器 皿を 一枚こそっと盗み

 「松に松虫 稲田に蛍 あんげ寝た こんげ寝た とうとうとん逃げた

☆知らぬ 顔して待つそのとこへ 忠太 お菊は早や帰ります

 「よんべおかしかった ざっつうさんの夜這い

  あんげ寝た こんげ寝た とうとうとん逃げた

 

4-1-5 盆踊り唄「千本搗き」 玖珠町戸畑(北山田) <77・77段物>

☆一重ヨー 二重の三重内山で(アーレモサイサイ コーレモサイ)

 藁でヨー 髪結うた炭焼き小五郎ヨ(ヤットセーノヨーイヤサ

 アーレモセー コーレモセ セノヨーイトナー)

 

4-1-6 盆踊り唄「千本搗き」 玖珠町太田(八幡) <77・77段物>

☆国はヨー 関東下野の国(アーレモサイサイ コーレモサイ)

 那須ヨー 与一という侍はヨ

 「よんべおかしかった ざっつうさんの夜這いど

  あんげ寝た こんげ寝た とうとう とん逃げた

 ※よんべ=昨夜 ざっつうさん=座頭さん

☆背は 小兵にござ候えど 積もる御年十六歳で 

 (ヤットセーノヨーイヤナ アーレモサー コーレモサ セノヨーイトナー)

 

4-1-7 盆踊り唄「千本搗き」 玖珠町中塚(八幡) <77・77段物>

☆育てヨー られたるこの婆さんに(アーレモサイサイ コーレモサイ)

 永のヨー 暇を差し上げ願うヨ(ヤットセーノヨーイヤナ

 アーレモサー コーレモサ セノヨーイトナー)

 

4-1-8 盆踊り唄「千本搗き」 玖珠町日出生(日出生) <77・75一口>

☆今年ゃヨー 豊年 コラ穂に穂が咲きて(アーレモサイサイ コーレモサイ)

 道のヨー 小草にゃヤレ米がなるヨ(ヤートコセーノヨーイヤナ

 アレワイセー コレワイセ ヨーイトヤー)

 

4-1-9 盆踊り唄「千本搗き」 玖珠町杉山下り(古後) <77・77段物>

☆国は関東 下野の国(アレワイサー コレワイサ)

 那須サー 与一という侍はヨ(ヨートセーノ ヨーイヤナ

 アレワイサー コレワイサ ヨーイトナ)

 

4-1-10 盆踊り唄「千本搗き」 山国町守実(三郷) <77・77段物>

☆水の出端にすっぱりこんと流す(ヤーハレワイサー コレワイサ)

 そこでナー ご連中よよく聞きなされヨ(ヤートーセーノ ヨーイヤナ

 アレワイサー コレワイサ) ホイ(ヨホイトナ)

☆こんな踊りも厭いたよにゃ見ゆる 後の手拍子で祭文とゆこか

 

4-1-11 盆踊り唄「千本搗き」 山国町中摩(三郷) <77・77段物>

☆東西南北おごめんなされ(ヤーハレワイサー コレワイサ)

 うちにサー ござるかご主人様は(ヤートーセーノ ヨーイヤナ

 アレワイサー コレワイサ) ホイ(ヨーイトナ)

☆うちにござらば願いがござる わしの 願いは余の儀じゃないが

☆聞けばお宅にゃ父上様が 長の ご病気と噂にゃ聞けば

☆たまに一度の見舞いもせずに お果て なされし初盆そうな

☆村の青年衆が心を寄せて 盆の 供養なり菩提のために

☆しばし間は踊ろとおしゃる 踊る 間は坪貸しなされ

☆坪がならずば木戸先なりと あーら 嬉しや坪借りだした

☆みんなどなたも踊りておくれ わしの 音頭は囃子でそまる

 

4-1-12 盆踊り唄「千本搗き」 山国町宇曽(三郷) <77・77段物>

☆東西ヨー 南北受け取りました(アレワイサー コレワイサ)

 みんなサー どなたも願いがござるヨ(ヤートーセーノ ヨーイヨナ

 アレワイサー コレワイサ) ホイ(ヨーイトナ)

☆わしの 願いは外ではないが もはや 今宵も夜更けでござる

☆あまり 長いはこの家にゃお邪魔 この家 ご亭主にお暇を貰うて

☆わが家 わが家と帰ろじゃないか おおきに ご退屈お邪魔になりた

☆坪の 掃除もできずに帰る 坪の 掃除はご家内様に

☆明日の 早朝にゃよろしく頼む みんな どなたもお暇乞うて

 

4-1-13 盆踊り唄「千本搗き」 山国町草本(溝部) <77・77段物>

☆さらば皆さん千本搗きゅ踊ろ(ヤーハレワイサー コレワイサ)

 あとのナー 踊りは千本搗きでござるヨ(ヨートーセーノ ヨーイヤナ

 アレワイサー コレワイサ) ホイ(ヨーイトナ)

☆わしの音頭で合うかは知らぬ(ヤーハレワイサー コレワイサ)

 合わぬナー ところは合わせておくれ(汽車は函曳く雪隠虫ゃ尾を引くよ

 アレワイサー コレワイサ) ホイ(ヨーイトナ)

☆雨は降る振る団子汁ぁたぎる(ヤーハレワイサー コレワイサ)

 雨がナー 団子汁ぁたぎる(松に下り藤ゃ見事なものじゃよ

 アレワイサー コレワイサ) ホイ(ヨーイトナ)

☆雨が降りゃ寝る天気がよけりゃ(ヤーハレワイサー コレワイサ)

 空がナー 曇ればアラ酒を飲む(かかん赤べこ鼠がかじるよ

 アレワイサー コレワイサ) ホイ(ヨーイトナ)

☆雨は降る振る洗濯物は濡れる(ヤーハレワイサー コレワイサ)

 便所ナー 行きたしアラ紙はなし(よんべ夜這いどが二階から落てた

 アレワイサー コレワイサ) ホイ(ヨーイトナ)

 

4-1-14 盆踊り唄「千本搗き」 耶馬溪町奥の鶴(下郷) <77・77段物>

☆お茶のお礼に二舞い三舞い(ヤーアレワイサッサー コレワイサ)

 みなさん踊りをあい頼みましたヨ(ヨーイトーセーノ ヨーイヤナ

 アレワイサッサーコレワイサ) ホイ(ヨーイトナ)

★ここのお父さんにゃお世話になった(ヤーアレワイサッサー コレワイサ)

 もう少し長生きしてほしかったな(ヨーイトーセーノ ヨーイヤナ

 アレワイサーコレワイサ)

☆村の願いも空しいけれど とうとうお父さんあい果てましたね

☆そこで最後に心をこめて 供養の踊りをしばらく舞おな

☆あーら嬉しや踊りが揃うた しばし間はその調子にて

 

4-1-15 盆踊り唄「千本搗き」 耶馬溪町柿坂(城井) <77・77段物>

☆あーら嬉しや坪借りました(ハーアレワイサッサー コレワイサ)

 みんなどなたもヨ しっかりしゃんと踊れヨ(アー揃うた揃うたよ足拍子手拍子よ

 アレワイサッサーコレワイサ) ホイ(ヨーイトナ)

☆盆のナー 踊りも由来がござる(ハーアレワイサッサー コレワイサ)

 昔ナー 古事記の御釈迦の時代ヨ(ヨーイトセーノ ヨーイヨナ

 アレワイサッサー コレワイサ) ホイ(ヨーイトナ)

☆釈迦の御弟子の数ある中に(ハーアレワイサッサー コレワイサ)

 あるがナー 中にも目連尊者ヨ(アー御弟子の目連尊者よ

 アレワイサッサー コレワイサ) ホイ(ヨーイトナ)

 

4-1-16 盆踊り唄「千本搗き」 耶馬溪町山移(山移) <77・77段物>

☆東西南北おごめんなされ(アーアレワイサー コレワイサ)

 うちにナ ござるかヨ ご主人様はヨ(ヨーイトセーノ ヨーイトナ

 アレワイサーコレワイサ ヨーイトナ)

 

4-1-17 盆踊り唄「千本搗き」 耶馬溪町平田(城井) <77・77段物>

☆東西南北おごめぬなされ(アーアレワイサー コレワイサ)

 しばしナーワ 間は坪貸なされヨ(ヨーイトセーノ ヨーイヤナ

 アレワイサーコレワイサ ヨーイトナ)

☆坪は借りても持ちては行かぬ 踊り終わればすぐさま返す

 

4-1-18 盆踊り唄「坪借り」 三光村小袋(真坂) <77・77段物>

☆東西南北おごめんなされ(アレワイサー コレワイサー)

 しばしナーワ 間は坪貸しなされヨー(アヨーイトセーノ ヨーイトナ

 アレワイサー コレワイサ ヨホホーイートナ)

☆坪は借りても持ちては行かぬ 坪を借りたるその御礼にゃ

 

4-2-1 盆踊り唄「千本搗き」 山国町槻木(槻木) <77・77段物>

☆東西ヨー 南北おごめんなされ(アーハレワサー コレワサイ)

 風のヨー 便りで承ればヨ(ヨーイヨイソリャヨーイヤナ アレワサーコレワサ)

★お果てヨー なされし初盆そうなヨ

 (ヨーイヨイソリャヨーイヤナ アレワサーコレワサ)

☆そこで亭主にゃ願いがござる 大事な大事なお庭の先を

☆しばし間の坪貸しなされ みんなどなたも踊りておくれ

 

4-3-1 盆踊り唄「坪借り」 山国町大石峠(三郷) <77・77段物>

☆東西南北おごめんなされ(ハレワイサー コレワイサ)

 うちにござるかご主人様よ(ハレワイサー コレワイサ ヨーイトナ)

☆うちにござれば願いがござる 今宵一夜の坪貸しなされ

 

4-4-1 盆踊り唄「別府流し」 別府市浜脇(浜脇) <77・75一口>

☆里の名物流しは冴える(ヨーイヤナ コレワイセ)

 月もヨイヤサで ヤンレ 踊り出す(ヤートコセーノ ヨーイヤナ

 アレワイセ コレワイセ ナンデモセ)

 

 

 

●●● 伊勢音頭(その5・千本搗音頭) ●●●

 安心院周辺で唄われる節を集めた。「その4」を早間にして長囃子も簡略化しているほか、場合によっては音頭の節も省いている。これは池普請唄として唄われた頃の名残だろう。

 

5-1-1 盆踊り唄「三つ拍子」 玖珠町日出生(日出生) <77・75一口>

☆咲いた桜になぜ駒つなぐ(ヤーレショーヤーレショ)

 駒が勇めば ヤレサ花が散る(ソーリャヨーヤヨヤ

 アレワイセーコレワイセー ヨーイトナ)

 

5-1-2 盆踊り唄「東西南北」 院内町大坪(南院内) <77・77段物>

☆東西南北おごめんなされ(ヤレショーヤレショ)

 西も東も南も北も(ソーリャヨーイヨナ

 アリャセ コリャセ ヨーイヨナー)

☆おおさこの夜はご主人様の ご死去なされし供養の踊り

☆どうか一夜は坪貸したまえ おおさ嬉しや坪借り受けた

 

5-1-3 盆踊り唄「ばんば踊り」 安心院町下市(安心院) <77・77段物>

☆東西南北鎮まりたまえ(ヤレショーヤレショー)

 西も東も南も北も(ソリャヨーイヤナ

 アリャセー コリャセ ヨーイヨナ)

☆さても盆会の踊りというは 若衆連中の遊びにあらず

 

5-1-4 盆踊り唄「ばんば踊り」 安心院町中山(龍王) <77・77段物>

☆東西南北鎮まりたまえ(ヤーレショーヨイヨイ)

 西も東も南も北も(アヨーイトナー

 アリャセーコリャセ) ホイ(ヨイトセー)

☆こりゃさ盆会の踊りというは 若衆連中の遊びにあらず

 

5-1-5 盆踊り唄「ばんば踊り」 湯布院町荒木(北由布) <77・77段物>

☆東西南北静まりたまえ(ヤレショーヤレショー)

 西も東も南も北も(ソリャヨーイヨナー

 アリャセーコリャセ) ホイ(ヨーイヨナー)

☆それじゃ今から踊りの由来 盆の踊りの由来をきけば

 

5-2-1 盆踊り唄「ばんば踊り」 安心院町大(龍王) <47・45一口>

☆南北静まりたまえ(ヤーレショーヨイヨイ)

 ア東も南も北も(ソーリャ ソーリャ

 アリャセ コリャセ サノ ヨーイ)

☆若い時ゃ吉野に通うた 草木もなびかせた

 

5-3-1 盆踊り唄「ばんば踊り」 宇佐市熊(西馬城) <77段物>

☆東西南北鎮まりて(ヤレショーヤレショー)

 南北鎮まり(ヨーイヨナー アリャリャ コリャリャ エーイ)

☆よいさよい晩あらせもネ あらせも吹かず

 

 

 

●●● ヨイトナ(その1) ●●●

 大きく2つの節があるが、テンポがのろまで、旧調と思われるものを「その1」とした。玖珠周辺の伝承。

 

1-1-1 盆踊り唄「坪借り」 九重町飯田(飯田) <77・77段物>

☆盆のサ 踊りの由来の口説(コラサー) 昔

 インドの国主に生まれ(オサヨイトーナー ヨイトーナー)

 

1-1-2 盆踊り唄「ヨイトナ」 九重町飯田東部(飯田) <77・77段物>

☆元のサ 生まれじゃ悪事の生まれ(コリャサー) 悪が

 転じて病となれり(オサヨイトーナー ヨイトーナー)

 

1-1-3 盆踊り唄「盂蘭盆経」 玖珠町塚脇(玖珠) <77・77段物>

☆おうちござるかるかこの家の亭主 コラショイ 盆の

 七月七日をはじめ(オサ ヨイトーナー ソレカラジャー)

 

1-1-4 盆踊り唄「盂蘭盆経」 玖珠町大隈(玖珠) <77・77段物>

☆ここに語らん盂蘭盆経よ コラサー 心

 しずめてこれ聞きなされ(オサ ヨイトーナー ヨイトーナー)

☆あるが中にも大事な口説 国を 申せば中天竺の

 

1-1-5 盆踊り唄「ヨイトナ」 玖珠町日出生(日出生) <77・77段物>

☆お釈迦様にと尋ねてみてば(コラサー) 国は

 天竺広瀬の河原(オサヨイトーナー オサヨイトーナー)

 

1-1-6 盆踊り唄「ヨイトナ」 玖珠町森(森) <77・77段物>

☆アーここに語るは盂蘭盆経よ(コラサー) 心

 しずめてこれ聞きなされ(アーヨイトーナー ソレカラジャー)

 

1-1-7 盆踊り唄「盂蘭盆経」 玖珠町中塚(八幡) <77・77段物>

☆アラおうちござるかこの家の亭主 コラサ 盆の

 七月七日をはじめ(オサヨイトーナー ソージャロナー)

 

1-1-8 盆踊り唄「坪借り」 玖珠町四日市(北山田) <77・77段物>

☆おうちござるかこの家の亭主 コラサー 盆の

 七月七日をはじめ(オサヨイトーナー ヨイトーナー)

☆七日七夜の供養をすれば 聞けば こちらは初盆そうな

☆村の若い衆 踊りをします みんな こちらは初盆そうな

☆村の若い衆 踊りをします しばし 間は坪貸しなされ

☆おっと嬉しや坪借りだした みんな 若い衆 男子も女子も

☆しばし間は踊りを頼む 踊り 踊らにゃ音頭さんがまずい

 

1-1-9 盆踊り唄「坪借り」 玖珠町浦河内(北山田) <77・77段物>

☆さんさご亭主おうちでござる(コリャーサ) 聞けば

 お宅は初盆そうな(オサヨイトーナー ドッコイサノサー)

☆供養の踊りを二舞い三舞い しばし 間の坪借りなされ

☆初のご承知なんなとござる 坪を 借りたるそのうえからは

☆老いも若きも踊りを踊る 年に 一度の供養の踊り

☆ここに語るは盂蘭盆経よ いわれ よくよく承れば

☆昔いにしえお釈迦の時代 お釈迦 御弟子のそのある中に

 

1-1-10 盆踊り唄「ヨイトナ」 天瀬町高塚(馬原) <77・77段物>

☆おっとそじゃそじゃその調子にて(コラーショイ)

 しばし間はこの手でゆこか(サマヨイトーナー ヨイトーナ)

☆合うか合わぬか理と乗せしましょ そこでみなさま願いがござる

 

1-1-11 盆踊り唄「ヨイトナ」 大山町上野(西大山) <77・77段物>

☆国の始めは大和の国よ コラサー島の

 始まりゃ淡路が島よ(サマヨイトーナー ヨイトーナ)

☆踊り始めは目連尊者 国は豊後の日田郡くずれ

 

1-1-12 盆踊り唄「一つ拍子」 日田市羽田(東有田) <77・77段物>

☆何か一つは国づけしましょ ここで語るは盂蘭盆経よ 

 (ハヨイトーナー コラサノサ)

☆供養踊りの謂れを聞けば 謂れ謂れを聞きたまわれば

 

 

 

●●● ヨイトナ(その2)  ●●●

 「その1」のテンポをやや速めて、節に抑揚をつけたものを集めた。こちらの節を「ヨイトナ」と呼ぶことはないのだが、明らかに同系統である。玖珠周辺の伝承。

 

2-1-1 盆踊り唄「小屋起こし」 前津江村大野(前津江) <77・77段物>

☆花のお江戸のその中はらに さても

 珍し話がござる(ハーヨートサイサイ コラマカーサイ)

☆紺の暖簾に桔梗のご紋 音に

 聞こえし橋本屋とて(ハーヨーヨーセ ヨーヨーセ)

 

2-1-2 盆踊り唄「二つ拍子」 日田市羽田(東有田) <77・77段物>

☆四国讃岐の屋島が沖で(コラショイ) 源氏

 平家の御戦いで(ソレナー ソレナー)

☆父の義朝うち滅ぼされ(コラショイ) それを

 牛若無念に思い(サマヨイソレナー ドッコイサノサー)

☆無念一途は鞍馬に上り 鞍馬 上るとお師匠の前で

☆やっとう剣術 柔の前で 教えて 下されお師匠様よ

 

2-2-1 盆踊り唄「団七踊り」 日田市岩下(東有田) <77・77段物>

☆頃は寛永十四年どし 父の

 仇を娘が討つは(ナニガトコ ナニガセノ ヨヤサノセ)

☆いとも稀にて世に珍しき それを どこよと尋ねて聞けば

 

2-3-1 盆踊り唄「ばんば踊り」 大山町中津尾(西大山) <77・77段物>

☆東西東西おごめんなされ(コラショイ) 私ゃ

 この奥 二、三里 四、五里(アラヨイサガコラサデ ヤレサデサ)

☆ずっと田舎のお茶売り戻り(コラショイ) 聞けば

 こちらはご主人様の(アラよべどが背戸屋を ガッサガサ)

☆お果てなされし初盆そうな(コラショイ) お茶も

 たばこもいらざる故に(アラ夜から来なされ 抱いて寝ろ)

☆今宵一夜の坪貸しなされ(コラショイ) 坪を

 貸すなら床貸しなされ(アラヨイサノコラサノ ヨイサノサ)

 

2-3-2 盆踊り唄「小屋起こし」 天瀬町高塚(馬原) <77・77段物>

☆花のお江戸のそのかたわらに さても

 珍し心中話(ソラ ヨーヤ サノサーノ ヨヤーサーノサ)

 

2-3-3 盆踊り唄「小屋起こし」 玖珠町戸畑(北山田) <77・77段物>

☆アー国は西国 豊後の国よ(コラーサ) 音に

 聞こえし三日月の滝(ヨサ ヨイヤヨイヤサッサノ ヨイヤサノサ)

☆聞くも語るも涙の種よ 六十 三代醍醐の帝

 

2-3-4 盆踊り唄「小屋起こし」 玖珠町山浦(玖珠) <77・77段物>

☆東西南北 国からが先(コラーショイ) 国を

 語れば豊後の国に(アラ ヤートサッサノ ヤットコリャサ)

☆山田郷なる山浦村に(コラーショイ) 小字

 語らば前原里に(アラ ヤートサッサノ ヤットサノセ)

 

2-3-5 盆踊り唄「小屋起こし」 玖珠町大隈(玖珠) <77・77段物>

☆アー国は西国 豊後の国よ コラサー音に

 聞こえし三日月の滝(オサ ヨイヤヨイヤサッサノ ヨイヤサノサ)

☆聞くも語るも涙の種よ 六十 三代醍醐の帝

 

2-3-6 盆踊り唄「小屋起こし」 九重町町田(南山田) <77・77段物>

☆アリャ 東西南北静まりなされ コラサー今宵

 供養の踊りでござる(オーサ ヨーイヤサイサイ ヨヤサノサイ)

☆誰もどなたもお手振りなされ 一つ 手を振りゃ千部の供養

 

2-3-7 盆踊り唄「小屋起こし」 九重町飯田(飯田) <77・77段物>

☆東西南北おごめんなされ 今宵

 一夜は坪貸しなされ(オサヨーイノサイサイ ヨイトサノサ)

 

2-3-8 盆踊り唄「小屋起こし」 九重町野上(野上) <77・77段物>

☆アリャヤッサコリャコラサで小屋起こそうな コラサ

 どうで皆さまよろしく頼む(アラ ヨイヤヨイヤサノサノ ヨイトサノサ)

☆先の太夫さんな長々ご苦労 一で 色よし二で器量よし