分類別の盆踊り唄集 その13

●●● 数え唄 ●●●

 流行小唄の転用。南由布および堅田方面の流行で、それぞれ節が異なるが細分化は控えた。

 

1-1-1 盆踊り唄「一つ拍子」 湯布院町鮎川・津々良(南由布) <小唄>

☆一つとえ 一人死にゆく死出の旅 皆さん後生を願わんせ 南無阿弥陀

☆二つとえ 再び還らぬこの娑婆に 皆さん後生を願わんせ 南無阿弥陀

☆三つとえ 未来の土産にご念仏 皆さん後生を願わんせ 南無阿弥陀

☆四つとえ 容赦はないぞえご念仏 皆さん後生を願わんせ 南無阿弥陀

☆五つとえ いつまでこの世におりとうても 一度ゃ死なねばならぬぞえ 南無阿弥陀

☆六つとえ 無理を世人が言うたとて 仏になりたきゃ腹立つな 南無阿弥陀

☆七つとえ 何ほど命が惜しうとて 一度ゃ死なねばならぬぞえ 南無阿弥陀

☆八つとえ 幼者も貴人もご念仏 皆さん後生を願わんせ 南無阿弥陀

☆九つえ これほど尊いご念仏 皆さん後生を願わんせ 南無阿弥陀

☆十とえ とかくこの世は夢の中 皆さん後生を願わんせ 南無阿弥陀

 

1-2-1 盆踊り唄「数え唄」 佐伯市府坂・竹角(下堅田)、黒沢(青山) <小唄>

☆一つとのよのえ 柄杓に杖笠おいずるを 巡礼姿で父母を 訪にょうかいな

☆二つとのよのえ ふだらく岸うつみ熊野の 那智の小山に音高く 響こうかいな

☆三つとのよのえ 見るよりお弓は立ち上がり 盆にしろげの志 進上かいな

☆四つとのよのえ ようまあ旅に出しゃんした さだめし親子と二人連れ 同行かいな

☆五つとのよのえ いえいえ私二人旅 父さん母さん顔知らず 恋しいわいな

☆六つとのよのえ 無理に押し遣る餞を 僅かの金じゃと志 進上かいな

☆七つとのよのえ 泣く泣く別れて行く後を 見送り見送り伸上がり 恋しいわいな

☆八つとのよのえ 山川海里遥々と 憧れ訪ねる愛し子を 返そうかいな

☆九つとのよのえ 九つなる子の手を引いて 我が家に帰りて玄関口 入ろうかいな

☆十とのよのえ 徳島城下の十郎兵衛 我が子と知らず巡礼を 殺そうかいな

 

 

 

●●● ショーガエ節 ●●●

 古い流行小唄の転用。元唄との差異が大きい。

 

1-1-1 盆踊り唄「しょうがえ踊り」 日田市殿町(小野) <77・75一口>

☆ショガエ婆さん(焼き餅焼きよ

 よんべ九つ け アラ 今朝七つ サンショノ ショーガエ

 ヨーイ今朝七つ

 よんべ九つ け アラ 今朝七つ サンショノ ショーガエ)

☆上りゃ英彦山(下れば中津 ここが思案の あ 朝日橋

 朝日橋 ここが思案の あ 朝日橋)

 

 

 

●●● さのさ(書生節) ●●●

 流行小唄の転用。

 

1-1-1 盆踊り唄「書生さん」 山国町守実(三郷) <小唄>

☆書生さん 好きで虚無僧するのじゃないが(アナントナント)

 親に勘当され試験に落第し(ヨイショ) 仕方ないからネー

 尺八を 吹く吹く吹く間に門に立つ(ア ジッサイ ジッサイ)

☆梅干は 酒も飲まずに顔赤く 年もとらずにしわ寄せて

 元をただせば 梅の花 鶯鳴かせた節もあり

☆見やしゃんせ 忠臣蔵の七段を お軽さんは二階でのべ鏡

 縁の下では 九太夫が 由良さん知らいで文を読む

 

1-1-2 盆踊り唄「書生さん」 耶馬溪町大島(下郷) <小唄>

☆書生さん 好きで虚無僧するのじゃないが(コリャコリャ)

 親に勘当され試験にゃ落第し(ヨイショコリャ) 仕方ないからネー

 尺八を くわえて吹き吹き門に立つ(ア ジッサイ ジッサイ)

☆梅干しは 酒も飲まずに顔赤く 年も取らいで皺寄せて

 元をただせば 梅の花 うぐいす泣かせた節もある

☆朝顔は 馬鹿な花だよ根もない竹に 芽を出し葉を出し花つけて

 きりきりしゃんと 巻き付いて 末は御嶽さんで焦がれ死に

☆人は武士 気概は高山彦九郎 京の三條の橋の上

 遥かに皇居を 伏し拝み 流す涙は加茂の水

☆あの嬶は 粋な嬶じゃがありゃ他人の嬶 あの嬶気ままになるなれば

 奥の四畳半にゃ 連れ込んで ケツのなゆるほどしてみたや

☆あの花は きれいな花じゃがありゃ他所の花 あの花野山に咲くなれば

 一枝手折りて 床の間に 花の散るまで眺めたや

 

1-1-3 盆踊り唄「書生さん」 三光村諌山(山口) <小唄>

☆書生さん 好きで虚無僧するのじゃないが(ナントナント)

 親に勘当され試験にゃ落第し(ヨイショ) 仕方ないからネー

 尺八を 吹く吹く吹く吹く門に立つ(ア ジッサイ ジッサイ)

☆あの花は 粋な花じゃがありゃ他所の花 あの花野山に咲くならば

 一枝折りて 床の間に あの花散るまで眺めたい

☆惚れるなら 陸海軍の兵隊さんよりも 大学卒業の書生さん

 末は博士か 大臣か 末は博士か大臣か

☆いましばし 文もよこすな便りもするな わしが勉強の邪魔になる

 せめて卒業の 暁は 天下晴れての妻じゃもの

☆学び舎の 駒にまたがり片手に手綱 演習帰りのしなのよさ

 あんた上等兵で わしゃ芸者 同じ勤めで苦労する

☆それじゃから 僕が忠告したではないか 芸者の親切 雪駄の裏の金

 金のあるときゃ チャラチャラと 金がなくなりゃ切れたがる

 

 

 

●●● 博多 ●●●

 本調子の「さのさ」の前半を省いたものだが、節がやや変化しているためそれと気づきにくい。耶馬溪方面の流行。

 

1-1-1 盆踊り唄「博多」 山国町奥谷(三郷) <77・75一口>

☆博多騒動 米市丸にゃ(ハヨイトサッサ) 刀詮議に身をはめる

 刀 詮議にヤッコラサノ 身をはめる(ハヨイトサッサノ ヨイトサノサ)

☆生まれ山国 育ちは中津 命捨て場が博多町 命 捨て場が 博多町

☆博多米市 千菊連れて 刀詮議に身をはめた 刀 詮議に 身をはめた

 

1-1-2 盆踊り唄「博多」 山国町宇曽(三郷) <77・75一口>

☆博多千菊 米市連れて(ヨイトサッサ) 刀詮議に身をはめる

 刀 詮議にヤッコラサノ身をはめる(ヨイトサッサノ ヨイトサノサ)

☆今宵や十五夜 有明なれど 様がござらにゃ暮れの闇

 様が ござらにゃ暮れの闇

☆他人のにょんぼと 枯木の枝は あがるながらも恐ろしや

 あがる ながらも恐ろしや

 

1-1-3 盆踊り唄「博多」 山国町守実(三郷) <77・75一口>

☆踊る中にも 所作のよい子供(ヨイトサッサ) さぞやお客は嬉しかろ

 さぞや 親様サッコラサノ嬉しかろ(ヨイトサッサノ ヨイトサノサ)

☆後の手拍子で 音頭さんを頼む わしが音頭はまずはこれまで

 わしが 音頭は これまでよ

☆貰うた貰うたよ からかさ柄杓 先の太夫さんよこいなれ

 先の 太夫さんお休みなされ

☆お茶をお上がれ お煙草召され お茶や煙草が嫌いなら

 お茶や 煙草がお嫌いならば

 

1-1-4 盆踊り唄「博多」 玖珠町杉山下り(古後) <77・75一口>

☆博多騒動 米市丸にゃ(ハヨイトサッサ) 刀詮議に身をはめる

 刀 詮議にヤッコラサノ 身をはめる(ハヨイトサッサノ ヨイトサノサ)

 

1-1-5 盆踊り唄「博多」 耶馬溪町金吉(下郷) <77・75一口>

☆博多帯締 筑前絞(ヨイトサッサ)  歩む姿が柳腰

 歩む 姿がサッコラサノ柳腰(ヨイトサッサノ ヨイトサノサ)

☆博多踊りは しなよい踊り お尻振り振り合わせなれ

 お尻 振り振り 合わせなれ

☆好きと 嫌いが一緒に繰れば ほうき立てたり倒したり

 ほうき 立てたり 倒したり

 

1-1-6 盆踊り唄「博多」 耶馬溪町大島(下郷) <77・75一口>

☆博多騒動 米市丸は (ヨイトサッサ) 剣詮議に身をはめた

 剣 詮議にサッコラサデ身をはめた(ヨイトサッサノ ヨイトサノサ)

☆登りゃ英彦山 下れば中津 ここが思案の雲与橋

 ここが 思案の 雲与橋

☆賽の河原の 地蔵さんでさえも 小石々々で苦労する

 恋し 恋しで 苦労する

☆黒うする墨 すらるる硯 濃いも薄いも主次第

 濃いも 薄いも 主次第

☆わしとあなたは 硯の水よ すればするほど濃ゆくなる

 すれば するほど 濃ゆくなる

 

1-1-7 盆踊り唄「博多」 耶馬溪町柿坂(城井) <77・75一口>

☆博多騒動 米市丸は(ハヨイトサッサ) 剣の詮議に身をはめた

 剣の 詮議にサッコラサイノ 身をはめた(ハヨイトサッサノ ヨイトサノサ)

☆博多米市 千菊連れて 刀詮議に身をはめた

 刀 詮議に 身をはめた

☆博多帯締め 筑前しぼり 歩む姿は柳腰

 歩む 姿は 柳腰

☆立てば芍薬 座れば牡丹 歩む姿は百合の花

 歩む 姿は 百合の花

 

 

 

●●● 大津絵 ●●●

 「大津絵節」の後半を省き、前半のみを次々に繰り返していく類のものである。これは旧調で、今は元唄に近い節に改調したものが流布しているが、そちらは盆踊り唄というよりは新民謡的な位置づけのものであるため、ここでは省いた。

 

1-1-1 盆踊り唄「大津絵」 中津市大新田(小楠) <小唄>

☆九州豊前の中津の京の町 粋な別嬪さんに手を引かれ

 片端の町を(コリャコリャ) しずしずと

 もはや嬉しや小倉口 マ人の(ドッコイ)

 噂も広津橋 はるかに見えるは天通じ(コリャコリャ)

☆鹿が鳴きます秋鹿が 寂しうて鳴くのか妻呼ぶか

 寂しうて鳴かぬ(コリャコリャ) 妻呼ばぬ

 明日はお山のおしし狩り マどうぞ(ドッコイ)

 この子が撃たれますゆえ 助けください山の神(コリャコリャ)

☆国は播州の姫路の御城下で 青山鉄さんの悪だくみ

 かなえの皿を(コリャコリャ) 一枚盗み取り

 それとは知らずに腰元お菊 マなんぼ(ドッコイ)

 数えても数えても この皿一枚足りません(コリャコリャ)

☆三国一の富士の山 雪かと見れば白富士の

 吉野山(コリャコリャ) 吹きくる嵐山

 朝日に山々見渡せば マ小夜の(ドッコイ)

 中山、石寺山や 末は松山、大江山(コリャコリャ)

☆政岡が鶴千代君の お顔つくづく眺むれば

 あの千松が(コリャコリャ) いつもの通りにて

 雀の歌をば歌ってみやしゃんせと マ云えば(ドッコイ)

 千松渋顔して 裏の畑の苣の木に(コリャコリャ)

☆中津近くに名高い市が立つ 大貞放生会で八日が羅漢

 お取り越しは(コリャコリャ) 十月四日市

 宇佐のまんどころでおけつひねられた アノ餅は(ドッコイ)

 くうばの山中で 雨は降り出し傘もちゃなけれども(コリャコリャ)

☆日高川エ 清姫が 安珍さんに御用じゃと訪ねくる

 これいなもうし(コリャコリャ) ご出家様

 どこかここらで二十歳くらいの アノ立派な(ドッコイ)

 お坊さんにお逢いはなさせぬか 逢うた見たこた見たけれど(コリャコリャ)

☆十五夜のエ 月はまんまと冴ゆれどもエ 冴えぬは二人の仲じゃもの

 辛抱してくれ(コリャコリャ) 今しばしエ

 辛い勤めと思わいで マ怖い(ドッコイ)

 夢じゃと諦め下しゃんせ 逢うたこの夜の二人仲(コリャコリャ)

☆山中通れば定九郎が おーいおーいの親父さん

 その金こちらに(コリャコリャ) 貸して下さんせ

 いえいえ金ではありません マ娘(ドッコイ)

 お軽がしてくれた おーいおーいの握り飯(コリャコリャ)

☆夏の夜によいものは 空に一声ほととぎす 草葉にとまる

 (コリャコリャ)蛍虫 昼は草葉に身を隠し マ夜は

 (ドッコイ)小道に灯をとぼし 忍ぶ男の邪魔をする(コリャコリャ)

☆大阪をエ 立ち退いて 私の姿が目に立たば

 借り駕籠で(コリャコリャ) 身をやつし

 奈良の旅籠や三輪の茶屋 マ五日(ドッコイ)

 三日と日を送り 二十日余りに四十五両(コリャコリャ)

☆ちょいと投げ出す丁半めくり札 あいにゃ二も出る三も出る

 四と張れば(コリャコリャ) 五で取られ

 六な目札は繰り出さぬ マ七八(ドッコイ)

 おいて工面すりゃ 十年このかた負けバクチ(コリャコリャ)

☆山科の大雪に 東の果てから親子連れ

 はるばると(コリャコリャ) 訪ね来て

 力弥と祝言頼めども マ堅い(ドッコイ)

 お石さんが言葉ゆえ 承知なければ是非もない(コリャコリャ)

☆いざなぎや いざなぎや いざなぎ山の樟の木で

 舟を造りて(コリャコリャ) 今朝おろし

 柱は槇の木で桁は檜 マ綾や(ドッコイ)

 錦の帆を巻き上げて 舟の艫には松を植え(コリャコリャ)

 

 

 

●●● ノンヤホ節 ●●●

 古い流行小唄の転用。

 

1-1-1 盆踊り唄「ノンヤホ」 湯布院町鮎川・津々良(南由布) <小唄>

☆アラ 向かい通るはヤー ノンヤホー 清十郎じゃないか

 笠がよう似た 菅の笠 ヤーレ ノンヤホー

☆笠がよう似たとてヤー ノンヤホー 清十郎であらば

 お伊勢参りは みな清十郎 ヤーレ ノンヤホー

☆アラ 伊勢は七度ヤー ノンヤホー 熊野にゃ三度

 愛宕様には 月まいり ヤーレ ノンヤホー

☆アラ 愛宕様にはヤー ノンヤホー 様には愛宕

 愛宕様には 月まいり ヤーレ ノンヤホー

 

 

 

●●● イヨコノ節 ●●●

 古い流行小唄の転用。この種の転用は他県でも多々見られるが、ここに掲載するものはやや毛色が異なる。音引きが多く、唄い方が難しい。

 

1-1-1 盆踊り唄「五尺」 湯布院町鮎川・津々良(南由布) <小唄>

☆ヨイ 五尺(ソリワ 手拭いナー ソリワ 中染めて

 誰にくりょよりゃ ヤマコソ アリャノーホイサ)

☆ヨイ 誰に(ソリワ くりょよりゃナー ソリワ 様にやろ

 様がとらずば ヤマコソ アリャノーホイサ)

<中略>

☆ヨイ 佐渡と(ソリワ 越後はナー ソリワ 筋向かい

 橋をかきょうヤレナー ヤマコソ アリャノーホイサ)

☆ヨイ 橋を(ソリワ かきょうヤー ヤーレナー ソリワ 舟橋ゅかけて

 舟橋ゅナートントンと 橋を下からサー ヤマコソ アリャノーホイサ)

 

 

 

●●● しっとこ ●●●

 古い流行小唄の転用と思われる。

 

1-1-1 盆踊り唄「しっとこ」 湯布院町鮎川・津々良(南由布) <小唄>

☆春にゃ帯ゅしめ 身をこなせ ヨーノーホ アー三つ拍子で およこいせ

 

 

 

●●● 恋慕 ●●●

 古い流行小唄の転用。南由布および堅田谷のみの伝承で、両者は節が異なるが細分化は控えた。

 

1-1-1 盆踊り唄「恋慕」 湯布院町鮎川・津々良(南由布) <小唄>

☆雉の(めんどり つつじが元よ 妻よ恋しと ほろろうつ 恋慕)

 ソコ(ソーレワ恋慕 恋慕エー)

☆名をば(隠して 恋慕の道は 色とまことに 離れゆく 恋慕)

 ソコ(ソーレワ恋慕 恋慕エー)

 

1-2-1 盆踊り唄「恋慕」 佐伯市宇山・汐月・江頭(下堅田)、城村(上堅田) <77・75一口、三下り>

☆船は出て行く帆かけて走る 茶屋の娘は出て招く

 サー恋慕(恋慕 恋慕 ヤー恋慕や)

☆咲いた桜になぜ駒つなぐ 駒が勇めば花が散る

☆遠く離れて逢いたいときは 月が鏡になればよい 

☆恋に焦がれて鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が身を焦がす

☆灘と女島は棹差しゃ届く なぜに思いは届かぬか

 

 

 

●●● チリリン ●●●

 古い流行小唄の転用と思われる。音引きが多く、唄い方が難しい。

 

1-1-1 盆踊り唄「チリリン」 湯布院町鮎川・津々良(南由布) <小唄>

☆舟はヤーレー 出てゆく 帆かけて走る

 茶屋のヤーレー むす、娘はヤーレー 出て招く

 ササーエー ヤーレーヤーレー エートナー コレワセナーイ

 

 

 

●●● 与勘兵衛(その1) ●●●

 古い流行小唄の転用と思われる。堅田谷のみの流行だが、節がいろいろある。「その1」は比較的ゆったりとしたテンポで、長囃子を伴う。最も人口に膾炙した節である。

 

1-1-1 盆踊り唄「与勘兵衛」 佐伯市宇山・江頭・汐月・津志河内・小島・泥谷(下堅田)、長谷(上堅田)、蒲江屋形島(蒲江) <小唄、二上り>

☆与勘兵衛坊主が二人出た(ソコソコ) 一人は確かな与勘兵衛じゃ

 一人ゃしんしん信太の 森に住むではないかいな アラ実 与勘兵衛

 「一反畑のぼうぶらが コリャ なる道ゃ知らずに這い歩く

☆今年は豊年満作じゃ 庄屋もめぼしも百姓も

 猫もねんねんねずみも 猫もねずみもすりこのバチかいよ

 「一反畑のサヤ豆が ひとサヤ走れば皆走る

☆木立の庄屋さんは何が好き 恥ずかしながらも唐芋好き

 今朝もねんねん寝起きから 赤い唐芋の焼き冷まし

 「お前家持ちわしゃ子持ち 下から持ちゃぐるもぐら餅

☆真実保名さんに添いたくば 榊の髷と偽りて

 七日なんなん七夜さ 怨み葛の葉と寝たならば

 「やっとこやしまの ほしかの晩 ほしかの晩なら宵から来い

☆私とお前さんの若い時ゃ 女郎か卵かと言われたが

 今じゃとんとん年が寄って 寺の過去帳にしっかとつけられた

 「一反畑のぼうぶらが なる道ゃ知らいで這いまわる

☆因尾の庄屋さんの町戻り 脇差ゃ割れたや 割れ豆腐

 それをつんつんつづらで それをつづらでしっかと巻きとめた

 「納戸に小屋かけ…

 

 

 

●●● 与勘兵衛(その2) ●●●

 いよいよ急調の様相を呈し、三味線の弾き方も含めて非常に賑やかな印象を受ける。

 

2-1-1 盆踊り唄「与勘兵衛」 佐伯市波越・府坂・竹角(下堅田) <小唄、二上り>

☆与勘兵衛坊主が二人出た(合) 一人は確かな与勘兵衛じゃ

 一人ゃしんしん信太の 森に住むではないかいな アラ実 与勘兵衛

☆ソレ 今年は豊年満作じゃ 庄屋もめぼしも百姓も

 猫もねんねんねずみも 猫もねずみもすりこのバチかいよ

☆ソレ 木立の庄屋さん何が好き 恥ずかしながらも唐芋好き

 今朝もねんねん寝起きから 赤い唐芋の焼き冷まし

☆ソレ 真実保名さんに添いたくば 榊の髷と偽りて

 七日なんなん七夜さ 怨み葛の葉と寝たならば

☆ソレ 私とお前さんの若い時ゃ 女郎か卵かと言われたが

 今じゃとんとん年が寄って 寺の過去帳にしっかとつけられた

☆ソレ 因尾の庄屋さんの町戻り 脇差ゃ割れたや 割れ豆腐

 それをつんつんつづらで それをつづらでしっかと巻きとめた

 

2-1-2 盆踊り唄「与勘兵衛」 佐伯市石打(下堅田) <小唄、二上り>

☆アーソレ 与勘兵衛坊主が二人出た(合) 一人は確かな与勘兵衛じゃ

 一人ゃしんしん信太の 森に住むのが白狐 アラ実 与勘兵衛 ドッコイ

☆今年は豊年万作じゃ 道ばた小草に米がなる

 道のこんこん小草に 道の小草に米がなる

☆木立の庄屋さんは何が好き 恥ずかしながらも芋が好き

 朝もねんねん寝起きから 赤い唐芋の焼き冷まし

☆私とお前さんの若いときは 女郎や卵と言われたが

 今はとんとん年が寄って 寺の過去帳にしっかとつけられた

☆真実保名さんに添いたくば 榊の髷など結うわしゃんせ

 いかなしんしん新玉も よもや嫌とは言わすまい

☆弁慶坊主は荒坊主 生竹へし曲げてヘコに差す

 いかなきんきん金玉も いかな金玉もたまりゃせぬ

 

 

 

●●● 与勘兵衛(その3) ●●●

 「その1」よりは僅かにテンポが速いが、全体的に弾んだリズムで、却ってのんびりとした印象を受ける。合の手を2回挿むなど、騒ぎ唄風の雰囲気が色濃い。

 

3-1-1 盆踊り唄「与勘兵衛」 佐伯市西野(下堅田) <小唄、三下り、男踊り>

☆ソリャー 与勘兵衛坊主が二人出た(合) 一人は確かな与勘兵衛じゃ ハーイーヤー(合)

 一人ゃしんしん信太の 森に住むではないかいな アラ実 与勘兵衛(ソレ)

☆今年は豊年満作じゃ 庄屋もめぼしも百姓も

 猫もねんねんねずみも 猫もねずみもすりこのバチかいよ

☆木立の庄屋さんは何が好き 恥ずかしながらも唐芋好き

 今朝もねんねん寝起きから 赤い唐芋の焼き冷まし

☆真実保名さんに添いたくば 榊の髷と偽りて

 七日なんなん七夜さ 怨み葛の葉と寝たならば

☆私とお前さんの若い時ゃ 女郎か卵かと言われたが

 今じゃとんとん年が寄って 寺の過去帳にしっかとつけられた

 

 

 

●●● 与勘兵衛(その4) ●●●

 「その3」を田舎風にしたような雰囲気で、前半には「コチャエ節」の雰囲気も感じられる。

 

4-1-1 盆踊り唄「与勘兵衛」 佐伯市黒沢(青山) <小唄>

☆与勘兵衛坊主が二人出た ヨイ(合) ソレ一人は確かな与勘兵衛じゃ

 一人ゃしんしん信太の 森に住むではないかいな アリャ実 与勘兵衛

☆お前さんと私の若い時ゃ 芸者や卵と言われたが

 今じゃとんとん年が寄って 寺の過去帳にしっかとつけられた

 

 

 

●●● 大文字かぼちゃ(その1) ●●●

 古い流行小唄の転用。「その1」は陽旋で、長囃子を伴う。弾まないリズムで唄う。

 

1-1-1 盆踊り唄「一郎兵衛」 佐伯市宇山・汐月・泥谷(下堅田)、長谷(上堅田) <小唄、三下り>

○うちのナー 一郎兵衛と隣の一郎兵衛と よその一郎兵衛とナー

 アラ三つ(コノセ) 合わすりゃ ほんに一・三が三郎兵衛とな

 アラヨイワイナ ヨイワイナ

 「一反畑のぼうぶらが なる道ゃ知らずに這い歩く

○うちの二郎兵衛と隣の二郎兵衛と よその二郎兵衛と

 三つ合わすりゃ ほんに二・三が六郎兵衛とな

 「やっとこやしまのほしかの晩 ほしかの晩なら宵から来い

☆ここはナー 京町大文字屋のカボチャとて その名は一郎兵衛と申します

 背は(コノセ) 低うても ほんに眼は猿眼

 アラヨイワイナ ヨイワイナ

 「一反畑のぼうぶらが なる道ゃ知らずに這い歩く

☆頃は 七月精霊の祭りだと精霊棚 くりたてくりたて飾り立て

 中で 坊主が ほんに衣に玉だすき

 「ごろごろ鳴るのはなんじゃいな 石臼雷猫の喉

☆四月 八日のお釈迦の祭りだと申します 新茶の出花を頭から

 かくりゃ その日の ほんにその日の祈祷になる

 「カラカラいうのは何じゃいな 墓参に嫁ごの日和下駄

 

 

 

●●● 大文字かぼちゃ(その2) ●●●

 こちらは陰旋で、いよいよ急調の様相を呈している。全体的に賑やかな感じがする。

 

2-1-1 盆踊り唄「大文字屋」 佐伯市府坂・竹角・石打・波越(下堅田) <小唄、二上り>

☆ここは京の町 大文字屋のかぼちゃとて その名は一郎兵衛と申します

 背は(合) 低うても ほんに見る目は猿眼 アラヨイワイナ サーヨイワイナ ソレ

☆ここに春駒 すすふる音に春めけば 狐はスココン今宵とな

 一夜は ほんに ほんにスココンと鳴き明かす

☆頃は三月 雛祭りじゃと村々に 娘は打ち寄り遊びます

 中に 色めく 中に色めく姉娘

☆四月八日は お釈迦の誕生と申します お茶の出花を頭から

 かくりゃ お釈迦は ほんにお釈迦は濡れ仏

○うちの五郎兵衛と 隣の五郎兵衛と よその五郎兵衛とな

 三つ 合わすりゃ ほんに三五の十五郎兵衛

○うちの茶釜と隣の茶釜と よその茶釜と

 三つ 合わすりゃ 三唐が唐金 唐茶釜

 

 

 

●●● 大文字かぼちゃ(その3) ●●●

 「その2」を弾んだリズムにしたもの。三味線の弾き方が派手で、いよいよ賑やかさも極まっている。

 

3-1-1 盆踊り唄「だいもん」 佐伯市西野(下堅田) <小唄、三下り、男踊り>

☆ここに京の町 大文字屋のかぼちゃとて アラその名は一郎兵衛と申します

 背は(ヤットセイ) 低うても ほんに猿眼 アーヨイワイナ サーヨイワイナ(ソレ)

☆頃は正月 若松様じゃと申します そりゃまたどうして申します

 枝も 栄ゆる ほんに葉もしげる

☆二月初午 すすふる音に春めけば 狐がスココン今宵から

 今夜 一夜が ほんに夜のこく

☆花の三月 雛祭りじゃと申します 姫女が喜ぶ節句ぞな

 今夜 一夜が ほんに夜のこく

☆四月八日は お釈迦の誕生と申します お釈迦の産湯を頭から

 かくりゃ お釈迦も ほんに濡れ仏

☆五月五日は ちまきに兜 飾り立て 子供の喜ぶ節句ぞな

 中で 杓ふる ほんに飴もふる

☆頃は六月 夏祭りじゃと宮々で 氏子がにわかに跳び遊ぶ

 中で 田主さんが ほんに稲を植うる

☆頃は七月 精霊の祭りと棚かけて 坊様たちゃ衣に玉襷

 中で 踊り子 ほんに音頭とる

☆頃は八月 八幡祭りと祝い込み その名はそうだと申します

 背は 高うて ほんに伊達男

☆頃は十月 亥子の餅は石で搗く 搗けども練れんと申します

 練れんはずだよ ほんに石じゃもの

 

 

 

●●● 関門小唄 ●●●

 新民謡「関門小唄」の返しを省いた節を転用したもの。郷土化しているため、ここに掲載する。

 

盆踊り唄「甚吉」 直入町下竹田(下竹田)

☆郷土名物 甚吉柿と 炭で名高い下竹田(ソレ)

 ヤートセー ドッコイサノセー(ソレ)

☆味と風味は日本一よ 古い由緒の渋柿で