分類別の盆踊り唄集 その12
●●● 思案橋(その1) ●●●
音引きが多く、生み字の連続で節を長く引き伸ばして唄う。唄い方が非常に難しい。字脚から推して、旧町の面影を色濃く残すものと言えるだろう。堅田谷の伝承。
1-1-1 盆踊り唄「思案橋」 佐伯市宇山・汐月・江頭・城山(下堅田)、泥谷(上堅田) <小唄、二上り>
☆思案橋ヤー(マダマダ) 思案ヤー 思案橋越えて(アードッコイ)
行こか戻ろか思案(ソーレ) 思案橋
☆宮島 宮 宮島まわれば 浦が七里で七恵 七恵比須
☆北山 北 北山しぐれ 曇りなければ晴れて 晴れてゆく
☆この町に この この町に二人 どちら姉やら妹 妹やら
☆紫 むら 紫着せて どちら姉やら妹 妹やら
☆浦島 浦 浦島太郎 開けて悔しい玉手 玉手箱
●●● 思案橋(その2) ●●●
近世調に変化してはいるも、首句のみ775の字脚を残している例が見られる。半ばにて急に高調子にせり上げるところなど、座興唄としての技巧性を色濃く残す。日田方面で流行した節である。
2-1-1 盆踊り唄「思案橋」 上津江村上野田 <77・75一口>
☆思案橋から酒屋が見ゆる ヤー寄ろかまことに寄ろかナ 戻ろか思案橋
☆千丈小橋で出逢うた言うたが どこがまことにどこが 千丈の小橋やら
2-2-1 盆踊り唄「思案橋」 日田市関町(夜明) <77・75一口>
☆行こか戻ろか思案橋越えて オイ
ミヤー 来るはヤレ 来るはナー アラ誰ゆえ アラ精霊さゆえ
☆さても見事な上野のつつじ 枝の 枝の 豆田に葉は隈に
●●● 思案橋(その3) ●●●
「その2」の半ばより折り返すものを集めた。
3-1-1 盆踊り唄「思案橋」 上津江村川原 <77・75一口>
☆盆よ盆よと盆まじゃ待とが
イヤー 盆がソーライ 盆がナー すれたら何ゅ待とか
盆がコリャ 盆が
イヤー 盆がソーライ 盆がナー すれたら何ゅ待とか
☆盆の十五日に踊らぬ人は はらみ はらみ 女子か血気持ちか
はらみ はらみ はらみ はらみ 女子か血気持ちか
☆すだれ柳に糸よりかけて よれつ よれつ もつれつ面白や
よれつ よれつ よれつ よれつ もつれつ面白や
3-2-1 盆踊り唄「思案橋踊り」 日田市殿町(小野) <77・75一口>
☆思案橋ゅ越えて(ヤー来るは アヤレ来るはナ アラ誰ゆえ しょうさまゆえ)
誰ゆえ来るは(ヤー来るは アヤレ来るはナ アラ誰ゆえ しょうさまゆえ)
☆いつも七月盆ならよかろ(踊る 踊る ふりして様に逢う)
ふりして踊る(踊る 踊る ふりして様に逢う)
●●● 思案橋(その4) ●●●
節が簡略化され、ずいぶん平易になってきている。耶馬溪方面で流行したが、下火になった。
4-1-1 盆踊り唄「思案橋」 前津江村大野 <77・75一口>
☆思案橋から酒屋が見ゆる アラヤーハンハー
寄ろか どうでも寄ろかナ アラ 戻ろか思案橋
☆思案しかえてもま一度来ぬか 鳥も どうでも鳥も 古巣に二度戻る
4-2-1 盆踊り唄「思案橋」 本耶馬溪町西谷(西谷) <77・75一口>
☆思案橋から文取り落ちたナー
ヨーホホ 惜しや惜しやヨ(ショイショイ) 二人の名を流す
☆小石小川の鵜の鳥見なれ 鮎を鮎を くわえて瀬をのぼる
●●● 思案橋(その5) ●●●
「その4」の半ばより折り返すものを集めた。
5-1-1 盆踊り唄「思案橋」 山国町守実(三郷) <77・75一口>
☆思案しかえても一度は来ぬか
ヤーハンハー鳥も鳥も 古巣に二度戻る
ソリャー実ぞな鳥も
ヤーハンハー鳥も鳥も 枯れ木に二度とまる
☆思案橋から女郎屋が近い 行こか行こか 戻ろか思案橋
ソリャー実ぞな行こか 行こか行こか 戻ろか思案橋
5-1-2 盆踊り唄「思案橋」 山国町奥谷(三郷) <77・75一口>
☆思案橋から女郎屋が近い
ヤーハンハー行こか行こかドッコイショ 戻ろか思案橋
ソリャー戻ろか行こか
ヤーハンハー行こか行こかドッコイショ 戻ろか思案橋
☆思案橋から文ゅ取り落といた 惜しや惜しや 二人の名を流す
二人の惜しや 惜しや惜しや 二人の名を流す
●●● 思案橋(その6) ●●●
上句を「その4」で唄い出すが、半ばより「さっさ」に近くなり、下句の下3字を捨てるなどずいぶん変わった節である。東城井方面の局地的な流行。
6-1-1 盆踊り唄「思案橋」 本耶馬渓町樋田(東城井) <77・72一口>
☆わしが出しますソーラヨーハヨイ(ヨイヨイ) 藪から笹を(ショイショイ)
ヤットコラセーデ つけてつけて ソコ(おくれよ短)
☆竹に短冊七夕様は 思い思い(思いの歌)
☆わしが唄うたら大工さんが笑うた 唄に唄に(かんながかけ)
☆唄にかんながかけらりょならば 天に天に(はしごがかけ)
●●● 猿丸太夫(その1) ●●●
直入地方が本場で、大野地方西部でも盛んに唄われている。もとは三弦唄であったと思われるが、三味線を使わなくなった関係か囃子の箇所など早間の傾向にある。
1-1-1 盆踊り唄「猿丸太夫」 荻町恵良原(荻)、荻町柏原(柏原) <77・75一口>
☆猿丸太夫は(アラショイショイ) 奥山の
紅葉踏み分け鳴く鹿の(アラヨイヨイ ヨイヨイ ヨイヤナー
サートッチンチンリン トッチンチンリン)
1-1-2 盆踊り唄「猿丸太夫(二つ拍子)」 竹田市古園(宮城) <77・75一口>
☆猿丸太夫は(コラショイショイ) 奥山の 紅葉踏み分けアノ鳴く鹿の
(アラヨイヨイヨイサノ ヨイヨナー ヨイヨナー)
1-1-3 盆踊り唄「猿丸太夫」 竹田市倉木(嫗岳) <77・75一口>
☆猿丸太夫(コラショイショイ) 奥山に
紅葉踏み分け鳴く鹿の(アラヨイヨイヨイヨイ ヨイヤサー
サートッチンチンリン トッチンチンリン)
☆秋が来たとて 鹿さよ鳴くに なぜに紅葉は色づかぬ
☆鹿が鳴く鳴く 秋鹿が鳴く 寒さで鳴くのか妻呼ぶか
☆寒さで泣かぬ 妻呼ばぬ 明日はお山のおしし狩り
1-1-4 盆踊り唄「猿丸太夫」 久住町都野(都野) <77・75一口>
☆猿丸太夫はホイ(アラショイショイ) 奥山の
紅葉踏み分け鳴く鹿の声(アラヨイヨイ ヨイヨイ ヨイヨナー
サートッチンチンリン トッチンチンリン)
☆鹿が鳴こうと 紅葉が散ろと 私ゃあなたにコリャ厭きは来ぬ
☆安芸の宮島 まわれば七里 浦は七浦コリャ七えびす
1-1-5 盆踊り唄「猿丸太夫」 直入町下河原・原・柚柑子(長湯) <77・75一口>
☆猿丸太夫は(アラショイショイ) 奥山の
紅葉踏み分け鳴く鹿の(アラヨイヨイ ヨイヨイ ヨイヤナー
サートッチンチンリン トッチンチンリン)
☆山は焼けても山鳥ゃ立たぬ なんで立たりょか子のあるに
1-1-6 盆踊り唄「猿丸太夫」 直入町長湯(長湯) <77・75一口>
☆猿丸太夫は(コラショイショイ) 奥山の
紅葉踏み分け鳴く鹿の(アラヨイヨイ ヨイヨイ ヨイヤナー
サートッチンチンリン トッチンチンリン)
☆思うて通えば 千里が一里 逢うて帰ればまた千里
☆別れ別れに さす盃の 中は酒やら涙やら
1-1-7 盆踊り唄(直入郡) ※『俚謡集』より
☆猿丸太夫はヨッショイショイ 奥山に
紅葉踏み分け鳴く鹿の サヨイヨイヨイヨイ ヨイヨナー
サトッチンチンリン トッチンチンリン
1-1-8 盆踊り唄「猿丸太夫」 緒方町辻(小富士) <77・75一口>
☆猿丸太夫は(ヨイヨイ) 奥山の 紅葉踏み分け鳴く鹿の
(ヨイヨイヨイヨイ ヨイヤサー トッチンチンリン トッチンチンリン)
☆様よ出てみよ 奥嶽山にゃ みかん売り子が灯をともす
☆みかん売り子じゃ わしゃないけれど 道が難所で灯をともす
1-1-9 盆踊り唄「猿丸太夫」 緒方町馬場(緒方)、原尻(南緒方) <77・75一口>
☆猿丸太夫は(コリャコリャ) あの奥山の 紅葉踏み分け鳴く鹿の
(ヨイヨイヨイヨイ ヨイヤサー トッチンチンリン トッチンチンリン)
1-1-10 盆踊り唄「猿丸太夫」 清川村臼尾(牧口) <77・75一口>
☆猿丸太夫は(ショイショイ) 奥山の 紅葉踏み分け鳴く鹿の
(ヨイヨイ ヨイヨイ ヨイヤサー トッチンチンリン トッチンチンリン)
☆惚れてはまれば 泥田の水も 飲めば甘露の味がする
1-1-11 盆踊り唄「猿丸太夫」 朝地町志賀(上井田) <75・75小唄>
☆猿丸太夫は(コリャコリャ) 奥山の 紅葉踏み分け鳴く鹿の
(ヨイヨイヨイヨイ ヨイヤサー トッチンチンリン トッチンチンリン)
☆忠臣蔵なる初段目の 初段目 鎌倉 鶴ヶ岡
☆鶴ヶ丘なる神殿に 数多の兜を飾り立て
☆どれが義さの兜やら 義さの兜にゃ印ある
1-1-12 盆踊り唄「猿丸太夫」 大野町夏足(大野) <77・75一口>
☆猿丸太夫は(コリャコリャ) 奥山の 紅葉踏み分け鳴く鹿の
(ヨイヨイヨイヨイ ヨイヤーサー トッチンチンリン トッチンチンリン)
☆川端通る薪売り 上も木が行く下も行く
☆割れたもあれば割れぬのも あるは唐津屋の縁の下
☆長いもあれば短いも あるはお侍の腰のもの
☆畑の中の茶園株 八十八夜を待つばかり
☆忠臣蔵なる初段目は 初段目 鎌倉 鶴岡
1-1-13 盆踊り唄「猿丸太夫」 大野町片島(大野) <77・75一口>
☆猿丸太夫は奥山の 紅葉踏み分け鳴く鹿の
(アラヨイヨイヨイヨイ ヨイヤーサー トッチンチンリン トッチンチンリン)
☆畑の中の茶園株 八十八夜を待つばかり
☆長いのもあれば短いも あるはお侍の腰のもの
☆川端通る掛け木売り 上も木が行きゃ下も行く
☆割れたのもあれば割れぬのも あるは唐津屋の縁の下
●●● 猿丸太夫(その2) ●●●
「その1」をずっとのろまにした節で、全体的に三弦調の傾向が顕著。鶴崎が本場で、近隣地域にて大流行し佐賀関・吉野方面や、挾間・石城川方面にも流布している。
2-1-1 盆踊り唄「猿丸太夫」 大分市鶴崎(鶴崎) <77・75一口>
☆来ませ見せましょ鶴崎踊り(合) いずれ劣らぬ花ばかり(合)
(ヨイーヨーイー ヨイーヨイー ヨイヤーサー)
☆娘島田に蝶々がとまる とまるはずだよ花じゃもの
(踊りは 花だよ 花だよ)
2-2-1 盆踊り唄「別府踊り」 別府市浜脇(浜脇) <77・75一口>
☆踊り踊らばしなよく踊れ しなのよいのを嫁にとる
(アリャヨイトサノ) ヨイヨイ ヨイヨイ ヨイヤサ
☆盆の十六日おばんかて行たら 茄子切りかけ ふろうの煮しめ
☆盆の十六日おばんかて来たら 上がれ茶々飲め やせうま食わんか
☆別府踊りはどこでも流行る 差す手引く手のしなのよさ
●●● 猿丸太夫(その3) ●●●
これは「笠づくし」の節で、「その2」に近い。座興唄としては「その1」に近い「笠づくし」も唄われていたことから推して、外題による差異というよりは地域差とみてよいだろう。盆踊り唄としては南由布のみの局地的な流行であった。
3-1-1 盆踊り唄「笠づくし」 湯布院町鮎川・津々良(南由布) <小唄>
☆一つ人目を忍ぶ夜は 女心の吉野笠
(アソレ エーソレ ヨイソレ ソレーヤートエ)
☆二つ深草少将は 小野小町に通い笠
☆三つ見もせぬ仲なれど 君が心の知れぬ笠
☆四つ夜な夜な門に立つ 人が咎むりゃ隠れ笠
☆五つ今まで逢うたれど 一夜も逢わずに帰り笠
☆六つ紫小紫 顔にちらちら紅葉笠
☆七つ情けのない客に お寄りお寄りと遊女笠
☆八つ山城小山城 国を隔てて近江笠
☆九つここに小網笠 雨の降り笠日照り笠
☆十で十まで上り詰め 笠もこれまで終わり笠
●●● 東山(その1) ●●●
全体的に「猿丸太夫その1」と似通った雰囲気だが、こちらの方が間遠にて耳に遅い。元唄は同じなのかもしれない。直入地方の伝承。
1-1-1 盆踊り唄「東山」 荻町宮平(柏原) <77・75一口>
☆東山から あれ出る月は(ハーヤレ さんさ車の輪のごとく)
☆さんさ車の 車のさんさ(ハーヤレ さんさ車の輪のごとく)
☆様は三夜の 三日月様よ(宵にチロリと見たばかり)
☆宵にチロリと チロリと宵に(宵にチロリと見たばかり)
●●● 東山(その2) ●●●
「その1」の半ばより折り返すものを集めた。
2-1-1 盆踊り唄「東山」 荻町柏原(柏原) <77・75一口>
☆東山から お出ます月は(ハーヤレ さんさ車の輪のごとく)
車の 車のさんさ(ハーヤレ さんさ車の輪のごとく)
☆盆の踊りは伊達ではないよ 先祖代々供養踊り
代々 代々先祖(先祖代々供養踊り)
2-2-1 盆踊り唄「東山」 竹田市古園(宮城) <77・75一口>
☆唄は唄いたし 唄の数知らぬ ヤレ 大根畑のくれがえし
畑の大根 ヤレ 大根畑のくれがえし(コチャーコチャー)
●●● 東山(その3) ●●●
「その2」に、さらに返しを加えたものを集めた。
3-1-1 盆踊り唄「東山」 久住町青柳(久住)、直入町下河原・原・柚柑子(長湯) <77・75一口>
☆東山から さえ出る月は ヤレ さんさ車の輪のごとし
車のさんさ ヤレ さんさ車の輪のごとし こちゃこちゃ こちゃ知らぬ顔よ
(ヤーレヤーレ ソレソレ ヤーレヤーレ ソートエ)
☆月の出鼻と 約束したが 様は来もせで風ばかり
来もせで様は 様は来もせで風ばかり こちゃこちゃ こちゃ風ばかりよ
3-2-1 盆踊り唄(直入郡) ※『俚謡集』より
☆東山からさえ出づる月は ヤレサンサ 車の火の如し
東山から 東山からさえ出づる月は ヤレサンサ 車の輪の如く
コチャコチャ 見るがほん車の サンササンサ 車の輪の如く
●●● 心中づくし ●●●
古い流行小唄の転用。採集例が3つのみで、いずれも節が異なるが細分化は控えた。
1-1-1 盆踊り唄「しんじゅ」 佐伯市西野(下堅田)、蒲江町屋形島(蒲江) <小唄、三下り、女踊り>
☆(ヤレーソレーソレー ヤートーヤレーソレーヤー)
十三鐘の春姫は(ハーソコラデセーイ) 鹿を殺せしその咎ゆえに
今は(コラセイ) 十三鐘つく しんじゅ
☆かの源の頼光は 大江山なる鬼神を退治 今は都も収まる しんじゅ
☆かの源の義賢は 源氏白旗こまんに渡し すぐにその場で腹切る しんじゅ
☆大阪椀屋久右衛門 太い身代丸山通い 今は編み笠一つの しんじゅ
1-2-1 盆踊り唄「繁昌づくし」 蒲江町波当津浦(名護屋) <小唄>
☆さて正月は大黒の ハーソコラデセー 根松ゆずれし裏白飾る
手まりオイナ 破魔弓オイナ 羽根突く繁昌
ハーシテコイナー マッカショエ ヤトセ ハレバリヤン
☆二月小なる初子の日 子の日遊びといずこの人が 茶屋や酒屋や出店の繁昌
☆さて三月は大名衆の 日にも間もないお江戸の勤め 彼方此方や出代わり繁昌
☆四月小なる朔日に 戌の吉日麦刈り初めて 刈るも豊かや釜戸の繁昌
☆五月めでたや辰の日に 稲を刈る日に田を植え初めて 田植音頭でちょうとめ繁昌
☆さて六月はお祇園の 祇園祭りは中旬の頃 氏子賑わし芝居繁昌
☆さて七月は盂蘭盆の 先祖供養は精霊で送る 浴衣 折笠 踊り子の繁昌
☆さて八月はお彼岸の 羽織袴や麻裃で 彼岸参りはお寺の繁昌
☆九月めでたの百姓衆の 稲の実りの終いであれば 倉に詰めおく俵の繁昌
☆さて十月は初亥の日 亥の子祝いといずこの人が 餅を搗き搗きお祝い繁昌
☆さて霜月は大切な 神に神楽は太夫衆の手芸 秋が勇めば氏子の繁昌
☆師走めでたや大晦日に 飾るつるの葉お鏡餅に 揃うた笑顔は御家内繁昌
1-3-1 盆踊り唄「山路踊り」 玖珠町森(森) <小唄>
☆山路が吹きし笛竹は(サーナニガマーカーセー)
身より大事な草刈男 真野の長者の娘と酒宴(合)
ソレーソーレー ソーレソーレー サートセー
☆二つの山に抱かれし森は 昔ゃ御殿 久留島様よ 今も名残の三島と酒宴
☆杵築の伊達者オシオとて つとは三尺折りゃまた二尺 笠は熊谷八つ折り雪駄
☆九軒の茶屋の大尽な 立つる襖の絵に描く虎は 威勢恋しと駆け出す酒宴
●●● 覗き節 ●●●
覗きからくりの口上で唄われた口説が流行小唄として流布したものの転用。挾間周辺で流行した。
1-1-1 盆踊り唄「大正踊り」 野津原町上町(今市) <イレコ>
☆皆さん騒動は色と慾 八百屋お七の成り行きは(ヨイショ)
お寺は駒込吉祥院 奥の書院の次の間に(ヨイショ)
勉強なされし吉三さん お七が側に立ち寄りて(ヨイショ)
膝をちょいとついて目で知らす 私ゃ本郷へ帰ります(ヨイショ)
帰りゃ八百屋の店開き 店で売るのは人参や(ヨイショ)
品は数々ござれども も一度うちを燃したなら(ヨイショ)
好いた吉三と添わりょかと 娘心のひとすじに(ヨイショ)
店の火縄を盗み出し ポンと投げたるその先で(ヨイショ)
お七は梯子にかけ昇り 火事じゃ火事じゃと半鐘つく(ヨイショ)
お江戸は八百八百屋町 まもなく火事もあい済んだ(ヨイショ)
誰知るまいと思うたが 天知る地知る人が知る(ヨイショ)
そこでお七はくくられて 萌葱の袴に緋の衣(ヨイショ)
深い編み笠被せられ 栗毛の馬にと乗せられて(ヨイショ)
伝馬町から引き出され お七はいくつと問うたなら(ヨイショ)
私ゃ十五で午の年 十五であるまい十四じゃろ(ヨイショ)
いいえ十五の午の年 その日の役人哀れみて(ヨイショ)
十四といえば助かるに 十五といえば是非もない(ヨイショ)
そこでお七が高やぐら 下から火の粉が立ちのぼる(ヨイショ)
ヤレ熱いなお父さん 逢いたい見たいは吉三さん(ヨイショ)
色で我が身を焼き棄てる(コリャコリャコリャ)
1-1-2 盆踊り唄「大正踊り」 挾間町北方・柏野(挾間) <イレコ>
☆賀来がた辺の魚釣りは 国分煙草を腰にさげ
横瀬にゃばっちょ笠ひっかぶり 鶴田をかたげて向原
ここは行かりょか同尻の 広津留魚は食いつかれ
おどいおどいと鬼瀬を 通り過ぐれば池の上
池にも魚はおらんので 持病の蛇口を引き起こす
アー ドコイヤサッサト
☆柚の木でしばらく入湯して 竹の脇をば下りかけ
詰にゃけつまずいて田代まで 丸田で丸めた赤野薬
買うて来鉢の袋まで 飴の古野にゃちょいと困る
志手の坂をば下りがけ 北方辺にゃ宿をとる
☆馬の中尾にゃまたがりて ひとむち当つれば富永の
森の木辺までかけつけた 賀来神社にも参詣し
餅田で餅をたんと食い そこでお金も角の前
わしの白ハゲよいけれど かかの片面にゃわしゃ閉口
あまり長いのもご退屈 ここらあたりで大分か
1-2-1 盆踊り唄「イレコ」 庄内町阿蘇野(阿蘇野) <イレコ>
☆今度竹田の行列は 一では鉄砲二では弓
三では三社の大神輿 四では白旗猩猩で
五では五人のうちわどり 六つ六柱振り立てて
七つに何にもあい揃え 八つ屋敷の宮巡り
九つこれまで持ってきて 十でナー トントとナ 舞い納め
●●● 草津節 ●●●
流行小唄の転用。
1-1-1 盆踊り唄「チョイナ節」 津久見市堅浦(下浦) <77・75一口>
☆尾崎ヤブの内 小迫は都 ドッコイショ
間の花崎ゃコリャ 松のかげヨ チョイナチョイナ
☆仲間谷底 日陰の屋敷 浜は高尾で 色内名
●●● おけさ節 ●●●
流行小唄の転用。
1-1-1 盆踊り唄「おけさ」 武蔵町糸原(武蔵) <77・75一口>
☆ハー佐渡へ 佐渡へと草木もなびくヨ(ハヨイトコラ ドッコイナ)
佐渡はよいかえ すみよいか(ハヨイトコラ ドッコイナ)
●●● 江州音頭 ●●●
紡績工場の関係で関西から入ってきた流行音頭が郷土化したもので、中津、西大分、佐伯方面でそれぞれ流行した。本場の江州音頭よりも節が簡略化されており、むしろ「河内音頭(ヤンレ節)」に近い。
1-1-1 盆踊り唄「ドッコイサッサ」 中津市大新田(小楠) <77・77・77・77段物>
☆アー国は京都の三條が町で(アドッコイサッサ)
三條町にて糸屋がござる 糸屋与衛門、四代目の盛り
てがい番頭が七十と五人(アーヨイト ヨイヤマカ ドッコイサノサ)
☆七十五人のあるその中で 一の番頭に清三というて
年は二十六、男の盛り 連歌、俳諧、書き算盤の
1-1-2 盆踊り唄「ドッコイサッサ」 中津市今津(桜洲) <77・77・77・77段物>
☆ハーここに過ぎにしその物語(ハードッコイサッサイ)
国は中国その名も高い 武家の倅に一人の男
平井権八直則こそは(ソリャーヨイト ヨヤマカ ドッコイサノサ)
☆犬の喧嘩が遺恨となりて 同じ家中の本庄氏を
討って立ち退き東をさして 下る道にて桑名の渡船
1-1-3 盆踊り唄「江州音頭」 中津市伊藤田(三保) <77・77・77・77段物>
☆ヘー京じゃ一番 大阪じゃ二番(アドスコイサッサイ)
三と下がらぬ白金屋さん 蔵が十三、酒場が九軒
居り屋出店が三十と五軒(アラーヨイト ヨヤマカ ドッコイサノサ)
☆金の報いか前世の業か 二十と四のときゃ両親に別れ
明けて五の年妻子に別れ 身内兄弟みな死に別れ
1-1-4 盆踊り唄「ごうし音頭」 上浦町浅海井(東上浦) <77・77・77・77段物>
☆アー 今度豊前の小倉の町に(アラドッコイサイサイ)
染屋九兵衛という人ござる もとは栄華で暮らしもしたが
今は世に落ち憐れな者よ(ソリャー ヨイトヨーヤマカ ドッコイサーノセー)
●●● ドッコイセ節 ●●●
流行小唄の転用。ものつき唄として広く流布したが、盆踊り唄としては国東半島北浦辺のみの流行に終わったようだ。
1-1-1 盆踊り唄「手ぬぐい踊り」 真玉町潮見(西真玉) <77・75一口>
☆月のひょいと出を夜明けを違うてヨ(ハドッコイセ)
様を帰して気にかかる(ヨイヨイ ヨイヤサノ コラマカセ)
☆臼野港に二瀬がござる 思い切る瀬と切らぬ瀬と
●●● ストトン節 ●●●
流行小唄の転用。
1-1—1 盆踊り唄「ストトン節」 杵築市大片平(北杵築) <小唄>
☆スットントンスットントンと通わせて 今さら厭とは胴慾な
嫌なら嫌じゃと最初から 言えばスットントンで通やせぬ
スットントン スットントン
●●● ストライキ節 ●●●
流行小唄の転用。
1-1-1 盆踊り唄「しののめ」 湯布院町並柳・荒木(北由布) <77・75一口>
☆わしが思いは湯の岳山の 焦がるりゃ何としょ
(朝の霧よりゃまだ深いヨ しののめの
さりとは辛いね とか何とかおっしゃいましたかね)
☆汽車は出て行く煙は残る 焦がるりゃ何としょ
(残る煙がシャクの種 しののめの
さりとは辛いね とか何とかおっしゃいましたかね)
☆わしに通うなら裏から通え 焦がるりゃ何としょ
(前は車戸で音がする しののめの
さりとは辛いね とか何とかおっしゃいましたかね)
☆音がするなら大工さんを雇え 焦がるりゃ何としょ
(音がせぬよにしてもらえ しののめの
さりとは辛いね とか何とかおっしゃいましたかね)
●●● オヤマカチャンリン節 ●●●
流行小唄の転用。
1-1-1 盆踊り唄「オヤマカチャン」 挾間町朴木(由布川) <77・75一口>
☆ハー おやま買うよな たいまな金が
あれば味噌買うておじや炊け ハオヤマカチャンリン
☆お山ちゃんちんさんで儲けた銭を おやまで取らるりゃ是非がない
●●● 高い山(その1) ●●●
流行小唄の転用。「その1」には、元唄に近いものを集めた。ゆったりとしたテンポで、他県にて唄われる節に比較的近い。
1-1—1 盆踊り唄「高い山」 佐伯市長谷(上堅田)、宇山・汐月・江頭・津志河内・小島(下堅田) <77・75一口、二上り>
☆高い山から谷底見ればヨ(ソコソコ)
瓜や茄子の花盛りヨ アラソーレモ(合) アラも一つ
☆高い山からお寺を見れば お寺寂しや小僧一人
☆あの子よい子だ 牡丹餅顔で 黄粉つけたらなおよかろ
☆あの子見るとて垣で目をついた あの子 目にゃ毒 気にゃ薬
☆好いてはまれば泥田の水も 飲めば甘露の味がする
1-2-1 盆踊り唄「あの子よい子」 佐伯市黒沢(青山) <77・75一口>
☆あの子よい子じゃ 牡丹餅顔じゃナ(ソレ)
黄粉つけたらなおよかろナ(イヤ ソーレバ)
☆今朝の寒さが笹山越えて 露が袴の裾濡らす
●●● 高い山(その2) ●●●
早間になり、いよいよ騒ぎ唄の雰囲気がある。
2-1-1 盆踊り唄「牡丹餅顔(高い山)」 佐伯市西野(下堅田) <77・75一口、三下り、男踊り>
☆ソレー 高い山から谷底見ればヨ(ソコソコ)
瓜や茄子の花盛りヨ アラソーレワ(合) アラま一つ
☆高い山からお寺を見れば お寺寂しや小僧一人
☆恋で身を病みゃ親達ゃ知らず 薬飲めとは親心
☆ござれ話しましょ小松のかげで 松の葉のよに細やかに
☆あの子ぁよい子じゃ 牡丹餅顔で 黄粉つけたらなおよかろ
☆鮎は瀬に棲む 鳥ゃ木にとまる 人は情けの下に住む
☆あの子見るとて垣で目をついた あの子 目にゃ毒 気にゃ薬
☆好いてはまれば泥田の水も 飲めば甘露の味がする
2-1-2 盆踊り唄「高い山」 佐伯市波越・石打・府坂・竹角(下堅田) < 77・75一口 、二上り>
☆高い山から谷底見ればヨ(合) 瓜や茄子の花盛り
☆高い山からお寺を見れば お寺寂しや小僧一人
☆あの子よい子だ 牡丹餅顔で 黄粉つけたらなおよかろ
☆あの子見るとて垣で目をついた あの子 目にゃ毒 気にゃ薬
☆好いてはまれば泥田の水も 飲めば甘露の味がする