分類別の盆踊り唄集 その10

●●● 三勝(その9・お夏) ●●●

 一般に「お夏」と呼ばれる節を集めた。「三勝」の呼称は見られないも、明らかにその系統である。野津が本場で、周辺地域で非常に流行した。

 

9-1-1 盆踊り唄「お夏」 臼杵市塩田(臼杵) <77・77段物>

☆お夏サマエー 夏々 夏吊る蚊帳はヨー 冬にゃマ(ハサイサイ)

 吊られぬただ夏ばかり(ハヤンソレサッサ ヤンソレサ)

☆先の 太夫さんを 門から聞けば 一で 声よい二で節がよい

 

9-1-2 盆踊り唄「お夏」 臼杵市西海添(臼杵)・深田(下南津留) <77・77段物>

☆先のサーエー 太夫さんヨ 長々ご苦労ヨイ エしばしナ(ヨイヨイ)

 アラ間はおよこいなされ(ソリャ ヤンソレサッサー ヤンソレサ)

 

9-1-3 盆踊り唄「お夏」 臼杵市久木小野(中臼杵) <77・77段物>

☆そうじゃどなたも お夏でござるハンハー 踊るマ(ドッコイドッコイ)

 皆さんお手振りなおせ(ソレヤンソレサッサー ヤンソレサ)

☆しばし間はお夏でせろな お夏 夏々 夏吊る蚊帳は

 

9-1-4 盆踊り唄「お夏」 野津町野津市(野津市) <77・77段物>

☆佐伯サー 領とや アリャ堅田が宇山ヨ

 宇山サ(アードシタ) なりゃこそ名所もござれ

 「アラお月さんがちょいと出て 山の上

☆名所サー なりゃこそ アラ医者もござれ

 医者のサ(アーイヤマカサイサイ) その名を玄了院と

 「アラヤンソレーサーサ ドッコイサノサ

☆玄了サー 息子にゃ アリャ半蔵とござるヨ

 半蔵サ(ハーシッカリサイサイ) 二十一男の盛り

 「アラ今度ん子は逆子じゃ うんとけばれ

☆男サー ざかりは アラ色する盛りヨ

 色をサ(ハーアリャコラサイサイ) 好んで着る糸仕立

 「アラ 来るなら来てみよ 抱いて寝る

 

9-1-5 盆踊り唄「お夏」 野津町田野(田野) <77・77段物>

☆あらやマ 嬉しや アラまた落てて来たヨ

 落ててマ(アーヨヤコラサイサイ) 来たなら拾わにゃならぬ

 (ソラヤンソレサッサー ドッコイサノサ)

 

9-1-6 盆踊り唄「お夏」 野津町西神野(川登) <77・77段物>

☆私ゃナ 旅の者 ちょっと通りかけヨ

 不慮な(イヤコラサイサイ) 御縁でちょいと立ち寄りた

 「お月さんがちょいと出て 松の蔭

☆わしも 供養で 一節なりと 先の 太夫さんの助役しましょ

☆しばし 間は お休みなされ 先の 太夫さんの褒みょではないが

 

9-1-7 盆踊り唄「お夏」 大分市吉野(吉野) <77・77段物>

☆それじゃエー どなたも お夏でござるヨイ 踊るマ(ドッコイ)

 皆さんお手振りなおせ(ソレヤンソレサッサー ヤンソレサ)

 

9-1-8 盆踊り唄「お夏」 犬飼町大寒(戸上) <77・77段物>

☆伊予の宇和島長者のはんこヨー はんこマ(アーシッカリサイサイ)

 子供にゃ兄妹ござる(ヨーイガサーサノ ヨイガサノサー)

☆兄の八兵衛の妹のお蝶 お蝶生まれはきれいな生まれ

 

9-1-9 盆踊り唄「お夏」 三重町芦刈(三重) <77・77段物>

☆お夏ナー 夏々ヨー 夏かたびらはヨー 冬じゃマタ(シッカリサイサイ)

 冬々 冬着るものは(ア焼餅ゃとっちょけ朝茶の子)

☆節を お夏に地はやりかけの 今のやりかけ団七口説

 (アヨーイガサッサデ ヨイガサノサー)

 

9-1-10 盆踊り唄「お夏」 三重町菅尾(菅尾) <77・77段物>

☆お夏ナー 夏々ヨ 夏かたびらよサー 冬はマタ(イヤコラサイサイ)

 冬々 冬切る布子

 「ソラお月さんがちょいと出た 松の影

☆節はお夏で地はやりかけの お為半蔵の心中口説

 「ソラ今晩の男衆さんな 男前

☆佐伯領土や堅田が宇山 山じゃござらぬ宇山は名所

 「ソラ今晩の踊り子 踊り好き

☆名所なりゃこそお医者もござれ 医者のその名は玄龍院と

 「ソラ今晩の踊り子さんな べっぴんさん

☆そのやせがれにゃ半蔵というて 半蔵もとよりきれいな生まれ

 「ソラ今度ん子は逆子じゃ うんとけばれ

 

 

 

●●● 三勝(その10・弓引き) ●●●

 これは「その3」の変調かと思われるが、中囃子を間遠にしているほか下句の囃子が唄囃子になっており、ずいぶん印象が異なる。細かい節が多く、唄い方が難しい。大野地方北部から直入方面にかけての流行。

 

盆踊り唄「銭太鼓七つ」 竹田市倉木(嫗岳) <77・75一口>

☆今度踊るは銭太鼓の七つ チョイトエー(セガセー セガセー)

 しばし間はよろしく頼む(アーヤッチョイナンサー ドッコイセー)

☆様は三夜の三日月様よ 宵にちらりと ソリャ見たばかり

 

盆踊り唄「弓引き」 直入町長湯(長湯) <77・75一口>

☆弓は袋に刀は鞘に チョイトエー(チョイトエー チョイトエー)

 槍は旦那の ソリャ床の間に(トコヤンチョイナンサー ヨーヤルナー)

☆様は出て待つ出るこたならぬ 出るに出られぬかごの鳥

 

盆踊り唄「弓引き」 朝地町上尾塚(上井田) <77・77段物>

☆先の太夫さん長らくご苦労 チョイトエー(チョイトエー チョイトエー)

 わしが当座の声継ぎしましょ(ハーヤッサガホイナー ヨーヤルナー)

☆国は関東下総の国 那須与一という侍は

 

盆踊り唄「弓引き」 朝地町志賀(上井田) <77・77段物>

☆よいなやれしょな どなたもよいな チョイトエー(セガセー セガセー)

 でけたでけたよ その調子なら(アーヤッサガホイナー ヨーヤルナー)

☆国は関東で下野の国 那須与一という侍は

 

盆踊り唄「弓引き」 大野町片島(大野) <77・77段物>

☆それじゃしばらく弓引きしましょ チョイトナー(チョイヤナーチョイヤナー)

 過ぎし昔のその物語(ヤッチョイナンサー ドッコイセー)

☆国はどこよと尋ねてきけば 国は九州豊後の国で

 

盆踊り唄「弓引き」 大野町夏足(大野) <77・77段物>

☆月に群雲 花には嵐 コリャセー(コリャセーコリャセー)

 おごる平家に咲いたる花が(アーヤッチョンナンサー ドッコイサー)

☆夜半のひと咲き散りゆく姿 四国讃岐の屋島が沖の

 

 

 

●●● 三勝(その11・風切り) ●●●

 これは「その10」の変調で、全体が陰旋化し、節があっさりしている。大野地方北部および緒方、直入方面の流行で、明らかに「その10」と似通っているが踊り方を違えて、両者が共存している例が多い。

 

11-1-1 盆踊り唄「九勝」 荻町宮平(柏原) <77・77段物>

☆さあさどなたもこの調子なら(ヤレショーヤレショー)

 踊りゃやめまい ソリャ夜明けまで(アラヤッサガホイナラ ヨーヤルナ)

☆わしが口説は京都な江戸な しばし間よお手振り頼む

 

11-1-2 盆踊り唄「弓引き」 竹田市倉木(嫗岳) <77・75一口>

☆今度踊るは弓引き踊り(トナー ヨイトナー)

 しばしそれにて ソリャ頼みます(サーヤッサガホイナラ ヨーヤルナ)

☆踊り踊らば手に目をつけて 足を揃えて しなやかに

 

11-1-3 盆踊り唄「風切り」 竹田市古園(宮城) <77・75一口>

☆思うがままならあの振袖と(ヨイトナー ヨイトナー)

 朝日差すまで ソリャ寝てみたい(アラヤッサガホイナラ ヨーヤルナ)

☆思い山々どの山見ても 霧のかからぬ山はない

 

11-1-4 盆踊り唄「弓引き」 久住町都野(都野)、直入町長湯(長湯) <77・75一口>

☆様は三夜の三日月様よ(チョイトエー チョイトエー)

 宵にちろりと見たばかり(トコイヤトコナンサー ヨーヤルナ)

☆踊り踊ろか弓引き踊り 弓の引く手も品よくに

 

11-1-5 盆踊り唄「風切り」 緒方町辻(小富士) <77・75一口>

☆来るか来るかと川下見れば(ヨイトナー ヨイトナー)

 川にゃ柳の ソリャかげばかり(アーヤッサガホイナー ヨーヤルナ)

☆盆の踊りは伊達ではないぞ 先祖・祖先のお供養に

 

11-1-6 盆踊り唄「風切り」 緒方町原尻(南緒方)、馬場(緒方) <77・77段物>

☆お貸しなされよ先太夫様よ(ヨイトナー ヨイトナー)

 わしが当座の声継ぎしましょ(アヤッサガオイナラ ヨイヤルナ)

 

11-1-7 盆踊り唄「風切り」 朝地町上尾塚・志賀(上井田) <77・77段物>

☆奥の一間に花ゴザはえて(ヨイトナー ヨイトナー)

 酒やタバコをゆるりとあがれ(ハーヤッサガホイナー ヨーヤルナ)

 

11-1-8 盆踊り唄「風切り」 大野町夏足(大野) <77・77段物>

☆先の仕口とまた延ばします(ヨイトナー ヨイトナー)

 背は小兵でござ候えど(アーヤッチョイナンサー ドッコイセ)

☆親の代々 十九の春よ 平家方なる沖なる船の

 

11-1-9 盆踊り唄「弓引き」 千歳村長峰(井田) <77・77段物>

☆弓は袋に剣は鞘に(ヨイトセー ドッコイセー)

 源氏平家の御戦いに(アラヤッチョンナンサー ドッコイセ)

☆平家方なる沖なる船に 的に扇をさらりと上げて

 

 

 

●●● 三勝(その12・兵庫節) ●●●

 節をこね回して間遠に唄う。「三重節(その2)」の変調かと思われ、直入方面から玖珠にかけての伝承。

 

12-1-1 盆踊り唄「団七踊り」 久住町都野(都野) <77・77段物>

☆姉の宮城野 妹の信夫アーヨイ(ヤレショードッコイショ)

 中を切るのは志賀団七よ(サマー ヨイヤサノサノ ヨイヤサノサ)

「アリャこれこれ団七覚えあろサ 覚えなければ語ろうか(ヤレーショドッコイ)

 指折り数えりゃ三年前サ 河内の国では音高い(ヤレーショドッコイ)

 山中村というとこにサ 父の与茂作討ったじゃろ(ヤレーショドッコイ)

 焼野のきぎす夜の露サ 親はなくとも子は育つ(ヤレーショドッコイ)

 ???団七よサ ここで逢うたが優曇華の(ヤレーショドッコイ)

 花咲く春の心地よやサ 今さら仇じゃ覚悟せよ(ヤレーショドッコイ)

 姉の宮城野妹のサ 鍛え鍛えし鎖鎌(ヤレーショドッコイ)

 さあ来い来たれと身構えてサ 妹信夫はとどめさす ササこれで(アードッコイ)

 とどめて先の太夫さんに返す(サマー ヨイヤサノサノ ヨイヤサノサ)

 

12-1-2 盆踊り唄「兵庫」 久住町都野(都野) <77・75一口>

☆できたできたよ大輪ができたアーヨイ(ヤレショードッコイショ)

 できた大輪を崩さぬように(サマー ヨイヤサノサノ ヨイヤサノサ)

☆踊りゃしなじな手に目をつけて 踊るうちではあの娘が一よ

☆今年ゃ豊年穂に穂が咲いて 道の小草にゃソリャ米がなる

 

12-1-3 盆踊り唄「団七踊り」 直入町下河原・原・柚柑子(長湯) <77・77段物>

☆姉の宮城野 妹の信夫ナ(ヤレショードッコイショ)

 中を行くのは志賀団七よ(アー ヨイガサノサノ ヨイガサノサ)

☆できたできたよ片輪ができた できた片輪をソリャ丸くしよ

「アラちょいと止めたサ 止めるにゃ止めたが何入りょか(ヤレーショドッコイ)

 イレコを入よか謎かきょかサ 謎はさておきイレコ入りょ(ヤレーショドッコイ)

 朽網の流れを申そうかサ 緒方の流れを申そうか(ヤレーショドッコイ)

 朽網の流れも五千石サ 緒方の流れも五千石(ヤレーショドッコイ)

 緒方の流れを申しましょサ 緒方で名高い三ノ宮(ヤレーショドッコイ)

 三ノ宮なる祭典はサ 一で鉄砲 二で白熊(ヤレーショドッコイ)

 三で三社の御神輿サ 四では白旗 猩々緋(ヤレーショドッコイ)

 五では五人の団扇舞サ 六つ六頭振り立てて(ヤレーショドッコイ)

 七つ何にも御揃うたサ 八つ社に舞い込んで(ヤレーショドッコイ)

 九つここらで宮巡りサ 十でトントコトンの舞い納め

 ささここで(アードスコイドスコイ) とどめて先の太夫に戻す

☆揃うた揃うたよしなよく揃うた 秋の稲穂の出穂よりゃ揃うた

 

12-1-4 盆踊り唄「八百屋」 久住町都野(都野)、直入町長湯(長湯) <77・75一口>

☆八百屋お七とヒノクマ煙草(ヤレショードッコイショ)

 色で我が身を焼き捨てる(サマーヨイヤサノサノ ヨイヤサノサ)

 

12-1-5 盆踊り唄(直入郡) ※『俚謡集』より

☆姉のみやきぬ 妹のしのぶ 中に立ちたる志賀団七

 サマヨイサノサ ヨヤサノサ

 

12-1-6 盆踊り唄「兵庫」 玖珠町戸畑(北山田) <77・75一口>

☆紺の前掛け松葉の散らしサーヨー(ヤレショードッコイショー)

 待つに来んとは ソリャ腹が立つ(サーヨイヤサノサノ ヨイヤサノサ)

「アリャドッコイネーコリャ

 どっこいここらでちょいと止めた(ヤレーショドッコイ)

 止めるにゃ止めたが何をやろサ

 イレコ入りょうか謎かきょか(ヤレーショドッコイ)

 私がかけたら解いてたもサ

 十三娘とかけたなら(ヤレーショドッコイ)

 それまた音頭さん何と解くサ

 音頭が解かねばわしが解く(ヤレーショドッコイ)

 十三娘とかけたのはサ

 竹やぶ雀と解きゃせぬか(ヤレーショドッコイ)

 それが心を言うなればサ

 さわれば逃げるじゃないかいな ササこれで(ドッコイドッコイ)

 とどめて先の太夫さんに返す(サーヨイヤサノサノ ヨイヤサノサ)

☆好いたお方と夏吹く風は 入れてやりたや 蚊帳の中

☆踊る皆さまご注文がござる 次の太鼓で 扇子踊りをやろな 

 

 

 

●●● 三勝(その13・八百屋) ●●●

 「その12」の上句を「その11」に置き換えたような節で、直入方面の伝承。似たような節が多くて紛らわしいが、一応それぞれ区別されて共存している。

 

13-1-1 盆踊り唄「八百屋」 竹田市古園(宮城) <77・75一口>

☆八百屋お七と国分の煙草(ヨイトナー ヨイトナー)

 色でわが身を ソリャ焼き捨てる(サマー ヨイヤーサノー ヨイヤサノサ)

☆唄は理で押す三味ゃ撥で押す  桶の魚寿司ゃ ソリャ蓋で押す

 

13-1-2 盆踊り唄「団七踊り」 直入町長湯(長湯) <77・77段物>

☆姉の宮城野 妹の信夫ヨ(ヤレショー ドッコイショ)

 中を行くのが 志賀団七よ(ハーヨイガサノサノ ヨイガサノサ)

☆遺恨重なるアリャ父の仇 娘二人が仇を討つは

 

13-1-3 盆踊り唄「八百屋」 荻町柏原・宮平・瓜作(柏原) <77・75一口>

☆八百屋お七とヒノクマ煙草(ヨイトセー ヨイトセー)

 色でわが身を サマ焼き捨てる(サマー ヨイヤソジャソジャ ヨイヤサノサ)

☆踊りゃゆるゆる 小囃子しゃんと 囃子なけらにゃ口説かれませぬ

○ヤレ私が一言入れまする 私が音頭に謎かけよ(ヤレーショドッコイ)

 私がかけたら解いてたも 十三娘とかけたなら(ヤレーショドッコイ)

 それまた音頭さん何と解く 音頭さん解かねばわしが解く(ヤレーショドッコイ)

 十三娘とかけたのは 竹やぶ雀と解きゃせぬか(ヤレーショドッコイ)

 さわれば逃げるじゃないかいな 先の(ドッコイ)

 音頭さんにお返し申す(サマー ヨイヤソジャソジャ ヨイヤサノサ)

 

 

 

●●● 三勝(その14・葛引き) ●●●

 1句ごとに同じ囃子が入るもののうち、臼杵周辺のものと由布院から日田にかけてのものを集めた。両者は同じ流れのものではなく、たまたま似通った節が唄われたということなのだろう。いずれも下火になりつつある。

 

14-1-1 盆踊り唄「葛引き」 大分市吉野(吉野) <77段物>

☆花のお江戸のそのかたわらで(ソレヤンソレサッサー ヤンソレサ)

 

14-1-2 盆踊り唄「葛引き」 臼杵市久木小野(中臼杵) <77段物>

☆一で声よし 二で節のよさ(ソリャヤンソレナー サーヤンソレナー)

☆三はさらさら 四でしなのよさ(ソリャヤンソナー サーヤンソレサー)

 

14-2-1 盆踊り唄「もろさし」 直入町長湯(長湯) <77・75一口>

☆様と別れて松原行けば(ヤーンソレソレ ヤンソレナ)

 松の露やらソリャ涙やら(ヤーンソレソレ ヤンソレナ)

☆声はすれども姿は見えぬ 様は深野のきりぎりす

 

14-2-2 盆踊り唄「風切り」 久住町都野(都野)、直入町長湯(長湯) <77・77段物>

☆今の流行の風切り踊り(アライヤトコナンサー ドッコイショ)

 踊りくだされ風切り踊り(トコイヤトコナンサー ドッコイショ)

☆やあれ嬉しや踊りが揃うた それじゃ皆様 理と乗せましょか

 

14-3-1 盆踊り唄「三勝」 湯布院町鮎川・津々良(南由布) <77段物>

☆揃うた揃うたよ踊り子が揃うた(アーヤーンソレソレ ヤンソレサ)

☆秋の出穂よりゃなおよく揃うた(アーヤーンソレソレ ヤンソレサ)

「アラ 私が音頭に謎かけよ(アラ 謎かけよ)

 私がかけたら解いてたも(アラ 解いてたも)

 十三娘とかけたなら(アラかけたなら)

 それまた音頭さん何と解く(アラ何と解く)

 音頭が解かねばわしが解く(アラわしが解く)

 十三娘とかけたのは(アラかけたのは)

 竹やぶ雀と解きゃせぬか(アラ解きゃせぬか)

 さわれば逃げるじゃないかいな(アラないかいな)

 さあさ音頭さんにお返し申す(アーヤーンソレソレ ヤンソレサ)

☆今の入れごとなかなかお上手

 

14-3-2 盆踊り唄「三勝」 九重町飯田(飯田) <77段物>

☆国は関東下野の国(トコヤーンソレソレ ヤンソレサ)

☆那須与一という侍は

 

14-3-3 盆踊り唄「三勝」 天瀬町本城(馬原) <77段物>

☆国は天竺魔法の国よ(トコヤーンソレソレ ヤンガソレサ)

☆国の始まりゃ十三代目

「ヤンガセレ音頭さんなちょいと待ちゃれ ここらで踊り子がイレコしょか

 イレコのイの字も知らんばってんか

  あることないこと見たこと聞いたことつんくりまげて

 案じ出し出し申しましょ 口から出まかせ言うてみましょ 

 一つとせ コラ 一つとせ 人目もあるのに乗れ乗れと 押し立て進む人力車

 二つとせ コラ 二つとせ 二人で裸で抱き合うて 押し合うねじ合う相撲取りさん

 三つとせ コラ 三つとせ 見れば見るほどしたくなる 娘心か博多帯

 四つとせ コラ 四つとせ 夜の夜中にたまりかね ゴソゴソ這い出す斥候兵

 五つとせ コラ 五つとせ 今がよいとき毛を分けて ずっと押し込む体温計

 七つとせ コラ 七つとせ 長くて太いのに唾つけて ずっと押し込む針の耳

 八つとせ コラ 八つとせ やっぱり十八ゃよいときね 親もさしたがる針仕事

 九つとせ コラ 九つとせ 今晩盆踊り来る途中 ぱっちり割れたよ桐の下駄

 十とせ コラ 十とせ とうとう大学卒業して 新婚旅行は馬車馬で

 これさ御連中 おそまつなイレコ

☆お粗末どころか日本一でござる ここで受け取る音頭さんの役目

 (ソレヤーンセレセレ ヤンガセレサ)

 

14-3-4 盆踊り唄「三勝」 大山町小切畑(西大山) <77段物>

☆国は大阪新川堀の(トコヤーンセレセレ ヤンセレサ)

☆ここに川内ゴヱモン様の

☆一人娘におくめというて

 

 

 

●●● 三勝(その15) ●●●

 宇佐から耶馬溪にかけての伝承で、「その14」よりも早間である。

 

15-1-1 盆踊り唄「三勝」 山香町五徳寺(立石) <77段物>

☆よんべ山香の踊りを見たら(ヤンソレサッサーヤンソレサ)

 

15-1-2 盆踊り唄「ヤンソレ」 宇佐市麻生(麻生) <77・75一口>

★梅の小枝を折りかけおった(ヤーンソーレ ヤンソレサ)

 後で咲くやら ヤレ咲かぬやら(ヤーンソーレ ヤンソレサ)

☆花はいろいろ五色に咲けど(ヤーンソーレ ヤンソレサ)

 主に見返る ヤレ花はない(ヤンソレサッサノ ヤンソレサ)

 

15-1-3 盆踊り唄「ヤンソレ」 本耶馬渓町今行(東城井) <イレコ>

☆さてもみごとな大輪ができた(ヤーンソーレ ヤンソレサ)

★大輪できれば音頭にかかる(ヤーンソーレ ヤンソレサ)

☆どうせヤンソレサにゃイレコが薬(ヤーンソーレ ヤンソレサ)

 誰かどなたかイレコを頼む(ヤーンソーレ ヤンソレサ)

「おっさん待ちないちょい止めた(ヤーンソーレ ヤンソレサ)

 ヤンソレ踊りのイレコなら(ヤーンソーレ ヤンソレサ) ※以下囃子同じ

 私が一丁いれやんしょ ちょうど去年の盆じゃった

 私が踊りに来る道に 豆腐が半丁あえちょって

 しくしくしくしく泣きよった ほんとにしくしく泣きよった

 なんで泣くかち聞いたなら そんまた豆腐の言うことにゃ

★もとのお豆にわしゃなりたいと

「ほんとにしくしく泣きおった 難しことじゃち思うたけど

 私が見たときゃ背が低うぢ あんよも元来ガニ股ぢ

 どこぞち取柄はねえけんど これでも男ん端くれじゃ

★できることならしてやろと思うち

 

 

 

●●● 三勝(その16・イレコ) ●●●

 冒頭から地口のイレコになっており、末尾に「その15」を間遠にした節を添えるもので、下郷周辺の伝承。局地的な流行で、下火になっている。

 

16-1-1 盆踊り唄「三勝」 山国町奥谷(三郷) <イレコ>

「三勝坊主という奴は(ヨイショ) 出雲の国からもらわれて(ヨイショ)

 いかなきゃならないこれ娘(ヨイショ) 箪笥 長持 挟箱(ヨイショ)

 これほど仕立ててやるからに(ヨイショ) いてから帰るなのう娘(ヨイショ)

 そこらで娘が言うことにゃ(ヨイショ) 父さん母さんそりゃ無理な(ヨイショ)

 千石積んだる船でさえ(ヨイショ) 向こうで嵐の強いときゃ(ヨイショ)

 元の港にゃ戻るじゃないか(ヤーンソーレ ヤンソレサ)

 

16-1-2 盆踊り唄「三勝」 耶馬溪町下郷(下郷) <イレコ>

「ヤンソレ音頭さんわしが貰うた(ドスコイ) ここらで貰うは無理なれど(ドスコイ)

 無理なるところはわしが好き(ドスコイ) 三勝坊主というやつは(ドスコイ)

 いったいぜんたいイレコ好き(ドスコイ) わしが一丁どま入れやんしょ(ドスコイ)

 あんまり寒さに長火鉢(ドスコイ) 武部源蔵を差しくべて(ドスコイ)

 ちょいと一杯管丞相(ドスコイ) 燗が熱くば梅王丸(ドスコイ)

 呑んだるお顔が桜丸(ドスコイ) 八重に咲かして花と見る(ドスコイ)

 今宵の座敷が苅屋姫(ドスコイ) 最早東が白太夫で(ドスコイ)

 これもコリャ三勝 ご立派なイレコ(ヤーンソーレ ヤンソレサ)

 

 

 

●●● 三勝(その17) ●●●

 「その14」をさらに簡略化したもので、津江周辺の伝承。

 

17-1-1 盆踊り唄「団七踊り」 前津江村大野(前津江) <77段物>

☆国は奥州 白石の国(ヤンソレサッサー ヤンソレサ)

☆頃は寛永三年の頃

 

17-1-2 盆踊り唄「三勝」 中津江村八所(中津江) <77段物>

☆国は天竺魔法の国よ(ハヤンソレサッサー ヤンソレサ)

☆国の始まりゃ十三代で

 

17-1-3 盆踊り唄「団七踊り」 中津江村八所(中津江) <77段物>

☆国は奥州白石郡(ハヤンソレサッサー ヤンソレサ)

☆頃は寛永三年の頃

 

 

 

●●● 三勝(その18) ●●●

 大鶴周辺の伝承。「その17」を早間にして、上句の入りを引き延ばしたうえに後を詰めて唄うなど技巧に富んだ印象を受ける。

 

18-1-1 盆踊り唄「団七踊り」 日田市下河内(大鶴) <77・77段物>

☆頃は寛永十四年どし(ヤンソレヤンソレ ヤンソレサ)

 父の仇を娘が討つは(ヤンソレヤンソレ オイラノヤンソレサ)

☆いとも稀にて世に珍しき それをどこよと尋ねて聞けば